【私の視点 観光羅針盤 349】サーキュラーエコノミ―の萌芽 吉田博詞


 SDGsやサステナブルツーリズムというキーワードがここ数年で浸透してきた。そもそもSDGsは、2001年に策定されたミレニアム開発目標MDGsの後継として、15年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採決された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標である。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人取り残さないことを誓っている。16年から30年までの世界全体の開発目標ととらえるとよい。

 また、サステナブルツーリズムは、1992年の「国連環境開発会議(地球サミット)」で発表された行動計画「アジェンダ21」に基づき、UNWTO(国連世界観光機関)、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)、Earth Council(地球会議)の3者により95年に「観光産業のためのアジェンダ21」が表明され、その中に織り込まれた概念である。

 こうした文脈で見ていくと、昨今叫ばれているSDGsやサステナブルというキーワードは一時的なものではなく、地球規模の課題の中で約30年以上前から徐々に必要性がうたわれ、それが浸透してきたととらえていけばよいだろう。

 また、国連は15年ごとに開発目標を定めてきており、SDGsは30年までの努力目標であることを考えると、これからは徐々にSDGs達成への仕上げであり、30年以降の新たな目標が議論され始めていくフェーズに入ってきているとイメージを持つ必要がある。

 見方を変えると、次にどんな概念が専門家の間で議論されているかという観点をキャッチアップ・理解していければ、次に打っていくべき手もイメージが湧くだろう。その中の一つのキーワードとして挙がってきているのが「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」である。

 これは、大量生産、大量消費、大量廃棄を前提として、気候変動や生物多様性の喪失などマイナスの影響を及ぼす「Take(資源を発掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」という直線型の経済システムに代わる新たなシステムである。

 廃棄物や汚染などの負荷が発生しない製品・サービスを設計し、製品の価値をできる限り高く保ったまま循環させ続け、自然を再生し、人間のウェルビーイングや環境負荷と経済成長を分離することを目指している概念といえる。まだ、定義に関して明確に定まりきっているわけではなく、専門家の間でも少し解釈は変わってきているが、徐々に骨格は固まってきている。

 環境や地域社会との向き合い方に関して、コロナ禍で日本でも改めて議論が加速している中で、大局観から世界の動きをとらえて準備をしていく必要がある。直近で、23年にはG7サミットが広島で開催され、それに伴う閣僚会合が日本各地で開催される。

 世界ではこの2年で環境・地球に関する取り組みがより加速し、日本での取り組みに関しては、どこまでできているかが問われるだろう。常に先を見据えながら、身近な地域のため、子供たちのために何をどう残すのが幸せなのかを議論して、一つ一つ手を打ち続けていきたい。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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