昨今、観光庁の通称「看板商品創出事業」に代表される事業を活用し、各地でコンテンツ造成が加速している。各地の滞在がもっと魅力的に進化していくことを期待している。そうした中で、一部に感じる課題は、体験プログラムをつくることが目的とされて、想定顧客の動線や滞在イメージの整理が弱いということだ。
特に、インバウンド復活で、高単価で滞在時間も長い欧米豪等をターゲットに見据えて造成をする場合、実際に来訪を想定し、上位の概念から滞在イメージを整理していけると、今後の誘客可能性が上がっていくだろう。大事なポイントは、下記の3要素だ。
1、コンセプト
どんな時間を過ごしたいか、何をするために皆さんの地域に来てくれるのか、メインの目的は何か、というポイントの整理が必要だ。
前後に他の観光地も訪れる中で、その地域にしかない特別な差別化要素は何か。その背景やストーリーのどこに共感して、どこでどう体感できるのか。コンセプトを明確にして、分かりやすい言葉で背景のストーリーと併せて、提供者のオモイも込めて整理していく必要がある。また、そのコンセプトを明確に伝えられるキラー写真や映像で世界観をつくり上げるとよい。
2、宿や食事
体験プログラムだけを考えて、宿やアクセスは無視されてしまっていることも多い。ターゲットの滞在を考え、その地域全体のコンセプトを体感できる宿を含めた滞在のストーリーがほしい。
どの宿に泊まるのか、チェックインタイムや、宿が提供しているのはどんな空間・時間なのか。宿滞在も主目的になることは多分にあり、その食事内容や温泉・スパ等の提供プログラムの位置づけも整理しておきたい。それによりランチ等の在り方も検討が必要となる。
滞在となると同じ宿で2泊以上も考えられ、宿での別メニューだけでなく、もう1食は泊食分離をした、地域内でのローカルな食も想定したい。
3、ローカルコンシェルジュ
地域全体の滞在行程のバランスを考えて、デザインをしてくれるコンシェルジュの機能も必要だ。各スポットへのアクセスコーディネートや必要に応じた通訳の手配、天候や体調等の変化に伴う臨機応変な対応のサポート機能といったところまで、手が届くとありがたい。
それを実行していくには、普段から地域各所との連携がなされて、お互いに目的を持った信頼関係が醸成されていることが前提となる。
これら三つの要素をうまく包含して、地域自体の滞在をデザインしていけると、ぐっと目的をもって滞在していくイメージが湧いてくるだろう。メインとしての2泊3日のモデル滞在プランを考えて、オプションとしてその他プランのバリエーションもうまく整理することができれば、今後ローカルエリアも選ばれていくに違いない。
地域を俯瞰的に考えながら、そんなテーマ性や世界観を持ち、品質が担保された滞在の在り方の調整がなされていくことを期待したい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)