政府が水際対策を緩和してから訪日観光客の来訪も復活してきた。10月11日に個人旅行の受け入れや査証免除措置の再開を実施したことで、10月のJNTO発表の訪日観光客数推計値は49万8600人と9月の20万6500人から倍以上の伸びとなっている。コロナ前にあたる2019年10月は249万6568人であったことを考えると、2割程度まで回復してきたといえる。
この中でも特筆すべきなのが、上位の国を見ると、1位韓国約12.3万人、2位アメリカ約5.3万人、3位香港約3.6万人、4位台湾約3.5万人、5位タイ約3.4万人とゼロコロナ政策を続ける中国以外の東アジア、そして東南アジアが復活するとともに、アメリカが2位に入り込んでいる。また、米豪加仏独伊西の7カ国の合計が10万人超と全体の2割程度を占めており、全体の1割強だった19年比率で増していることも特徴といえるだろう。
まだ10月から緩和されたばかりの数字なので、これらに一喜一憂することは避けたいが、世界の市場は既に動き始めていることを考えると、日本で仮に第8波の感染が拡大しても、政府が水際対策の緩和を変えない限り、訪日観光客数は伸びていくことが予測される。
そんな中、回復傾向のインバウンドにおいて、私の会社が展開するAttractive JAPANの体験予約も一気に回復してきている。率直な傾向として、三つのポイントを挙げたい。
(1)文化体験需要は変わらず
日本文化的な体験の需要が相変わらず強いという傾向が挙げられる。茶道・侍・舞妓・酒蔵巡り、ガラスや刀づくり・自転車ツアーといったメニューの人気が高い。コロナで自然系のものへ需要が変わるかもしれないことが予想されていたが、文化系のプロダクトの予約が多く、時季の要因もあるかもしれないが、自然系プロダクトにおいては都市部の自転車ツアー以外が増えている実感はまだない。
(2)地方の体験も人気
地方での予約数も以前より増している傾向がある。魅力的なものであれば一定数地方へも出かけている傾向があり、しっかりとテーマ性のある良いものを作っていければ、地方でも誘客できる可能性を感じている。
(3)体験の単価アップ
体験の単価が上がっていることも特筆すべき傾向だと感じる。1人2~5万円するようなプロダクトも売れている。11月1日時点でみると、為替相場が対ドルで、19年約108円、22年約148円で3割ほど安く感じられる円安効果と、欧米豪という体験に対して良いものにはしっかりと予算をかけてくれる層の割合が高まっていることにも起因していると考えられる。
これらは、まだ初動の速報的な傾向である。ただ、3年待って準備してきた方々にはできる限り早く認識をしてもらえるとありがたい。
日本の誇るべき地域文化を後世に遺すという目的においては非常に良い傾向だと考えられるので、着実に回復に備えてもらえるとうれしい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)