【私の視点 観光羅針盤 377】ガイドにインタープリテーション技術を 吉田博詞


 エコツーリズムの領域では、インタープリテーターの概念が普及して久しい。アメリカのインタープリテーション分野の第一人者で、その技術と知識の教育・普及に20年を費やしたフリーマン・ティルデンは、インタープリテーションを「単純に情報や気持ちを伝えるのではなく、直接、体験や教材を通して事物や事象の背後にある意味や関係を明らかにすることを目的とした活動の事」と定義している。アメリカの国立公園には、このインタープリターという職名を持つ人もおり、参加者に気づきを与える役割を果たしている。

 昨今、インバウンドの復活とともに、ガイドの活躍の範囲も広がっている中で、自然やエコガイドに、この技術は必要となってくるのはもちろんだ。そして、一般的なまちや歴史ガイドにもこのスキルというのは必要となってきていると感じている。日本国内において無料のボランティアガイドが普及してしまった中で、ガイド養成時に知識の共有がメインになってしまい、参加者に気づきを与えるといった技術を持ち合わせていないケースが多い。一方的な情報の伝達になってしまっているのが大きな課題であり、このインタープリテーション技術の普及が期待される。では、具体的にどうすればよいか? 先述のフリーマンは、インタープリテーションにおいて六つの原則を唱えている。

 (1)参加者の個性や経験と関連づけて行う必要がある(2)単に知識や情報を伝達することではない。啓発であって、知識や情報の伝達が基礎だが、啓発と伝達は同じものではない。ただし、知識や情報の伝達を伴う必要がある(3)素材が、科学・歴史・建築・その他何の分野であれ、いろいろな技能を組み合わせた総合技能である。技能であるため、人に教えることができる(4)主な目的は教えることではなく、興味を刺激し、啓発することである(5)事物事象の一部ではなく、全体像を見せるようにするべきものである。相手の一部だけでなく、全人格に訴えるようにする必要がある(6)子どもに対しては、大人を対象にしたものを薄めてやさしくするのではなく、根本的に異なったアプローチをするべきである。大きな効果をあげるためには、別のプログラムが必要だ。

 これからのガイドは、単にそのまちの一つの施設やエリアを紹介するような立場から、暮らしや風土、それらを形成する自然そのものの在り方を伝えるような立場へと変わっていくことが期待されている。参加者に気づきを与えて、何かを持ち帰ってもらうようなスタンスで動いていく必要がある。

 政府の政策の中でも高付加価値型への転換が重要項目に挙げられている中で、このインタープリテーション技術の普及が加速していけば、きっとガイドおよびその地域の満足度が上がり、単価アップの好循環が回っていくに違いない。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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