昨今、国や自治体の実証事業や補助金等の審査の際に、販売を重視して成果をどれだけ上げるかという項目が見られている印象がある。これらは非常によい流れだと考えている。
最終的な目標としてのKGI(重要目標達成指標)やKGI到達へのステップをまとめたKPI(重要業績評価指標)、B by C(費用便益比)といった横文字が数多く用いられる中で、いかに事業として価値があるかという点を整理しているのは非常によい流れだろう。コロナ禍における経済対策的な側面も加味された補助金の在り方から、きちんと効果を見据えた事業が選定されるようになってきている中で、申請母体においてもこうしたものをしっかりと考える流れが加速している実感がある。
審査のお手伝いをさせてもらう際に、もっと見極めていくべきポイントとして議論に上がっているのが、継続的な事業の推進主体の在り方だ。多くの実証事業や補助金において、DMO等が申請母体になって動くことが多い。DMOも昨今は戦略策定やマーケティング能力が高まっている中で、ロジックが明確に通ったテーマ性のある申請が増えている。これは全体のスキルアップとしてよい傾向だといえるだろう。申請において、事業内での販売推進や、次年度以降も販売を強化するといった項目が増えてきている中で、その意欲は明確に数字や体制としても記載されていることが多い。
ただ、ここで課題になるのが、次年度以降それを積極的に販売、展開していくのは誰なのか、誰が責任を持って推進しようとしているのかという点である。その推進主体は本気で取り組もうとしているのか、それをやり遂げるための明確な背景やビジョンを持っているのかといった観点である。これらはもっと見極められるようになる必要性を感じている。
特に着地滞在プログラムにおいては、DMOがよほどDMC部門を本気で事業化しようとしていない限り、旅行業の資格を持っていたとしても円滑に運営することは難しいといえるだろう。事務的な処理だけで時間をとられ、手配やコーディネートのような時間がかかる実務を、身を削ってまで対応するインセンティブは弱い。仮に旅行業として大手旅行会社が入っていても、地域密着はハードルが高いのも実情ではなかろうか。
だからこそ、着地滞在プログラム造成の審査においては、よりDMC的な事業推進主体がいるか否か、その主体の事業ビジョンやモデル、実行するプログラムの位置付けに関してもっと精査されることを期待したい。単年度の打ち上げ花火でなく、地域に根付いた地元資本の会社が、事業として地域経済に貢献するようなモデルとして展開しようとしているか、意思が明確なところを見極めた上で応援がなされるようになっていければ、公的な実証事業や補助金もさらによいモデルに進化することは間違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)