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日本では「福祉」というと社会保障などの人間の福祉に限定されがちであるが、欧米では1960年代からアニマルウェルフェア(動物福祉=AW)が論議されてきた。英国では64年に主婦であったルース・ハリソンさんが『アニマル・マシーン:近代畜産にみる悲劇の主役たち』と題する本を出版し、家畜を経済動物として酷使する近代集約畜産の悲劇を告発した。この本の序文を書いたのは、62年に米国で『沈黙の春』を出版し、農薬などによる環境公害を厳しく告発して、その後の環境保護運動の先駆けとなったレイチェル・カーソン女史であった。
ハリソンさんの本が出版されてから、英国では家畜をストレスのない快適な環境で育てるAWへの関心が高まり、経済効果という狭い見地からだけで酪農・畜産問題を考えることが是正されるようになった。その後、欧州各国で家畜飼育に関する法規制が強化された。
遅ればせながら近年、日本でもようやくAWが問題視されるようになってきた。家畜をよりストレスのない自然な状態で健康的に飼育することが、結果としてより安全な酪農・畜産食品を生みだし、人間の健康に結びつくことが指摘され、論議され始めている。
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