【私の視点 観光羅針盤 411】パリ五輪年の仏マーケット 吉田博詞


 先日、4年ぶりにフランスの複数の旅行会社を訪問した。その際、オプショナルの需要の急拡大を実感した。弊社は、全国のインバウンド向けアクティビティを600以上取りまとめて紹介するアトラクティブジャパンというプラットフォームや文化体験のテーラーメイドサービスを展開している。各社からいわれたことは、以前は弊社のようなサービスへの需要は薄かったが、最近は一気に増えているということだった。おすすめ情報をもっと紹介していきたいので、提携を拡大していきたいという前のめりの話を多くもらえたのが印象的だった。

 フランスではより日本文化が浸透し、興味を持つ人が増えている中で、それらを体感したいという需要が増している。自身の文化に誇りを持っているからこそ、他の文化への興味関心が高く、日本でもよりその違いを楽しみたいという需要が大きい。また、じっくり堪能したいがゆえに、人の多いところを避けて地方部への関心が高いのも特徴である。

 フランス人訪日客が訪れる場所を整理してみたい。2週間程度の滞在が主となり、東京や京都は基本的にベースとして組まれる。そこに、日光、高山、金沢、高野山、直島、広島あたりから2カ所程度を追加で訪問するというのが一つのオーソドックスな旅程となるだろう。より、ローカルへの興味がある人々は、中山道、祖谷、沖縄、佐渡、隠岐の島などのプランが組まれることが多い。

 フランス人訪日客1人当たりの滞在消費金額は、3千から5千ユーロが一つの相場といわれている。12月後半で160円弱なので、160円とすると48万円から80万円程度を日本国内の滞在消費で使ってくれることになる。この金額以上を使って滞在を検討している人も多いので、消費金額には一定の期待を持てると考えられるだろう。航空券は以前に比べると高止まりしており、直行便は往復で25万円程度が相場だ。特に桜シーズンなど人気の時季には航空券はなかなかとりづらい状況になっている。

 また、日本側のランドオペレーターやガイドに関しても供給側が追い付いておらず「需要が拡大する中で対応してくれない、各社のレスポンスが遅すぎてびっくりするくらいだ」といわれ、需給のギャップの大きさを痛感したものだ。ある会社からは「日本は世界で一番ひどい!こんなに対応が遅い国は世界でもない」と笑って話しながら、それだけ日本への需要があるのだからしっかり提供してほしいと、はっぱをかけられたくらいでもある。

 改めてフランスマーケットにおいて、日本文化や地域への期待の高まりを感じてもらえたかと思う。円安だけでなく、文化的な価値として地域文化に興味を持ってくれているフランスマーケットは大事な市場の一つとしてさらに発展していくことが期待される。2024年のパリ五輪イヤーで世界がフランスに注目する中で、われわれも彼らの価値観に理解を深めながら相互交流を深める年にしていきたい。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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