政府は3月の訪日外国人客数が308万人で単月として過去最多となり、外国人客消費額も四半期(1~3月)ベースで1兆7500億円に上り、過去最高と発表した。岸田文雄首相は4月中旬の観光立国推進閣僚会議で「2024年は外国人客数も消費額も過去最高を達成できる見通しだ」と述べているが、インバウンド隆盛化の一方で日本人による国内観光は沈滞化している。
IT企業クロスロケーションズはスマートフォンアプリ利用者の位置情報を基に全国主要都市60地点の人出データ(訪日客を含まない)を推計し、その速報値を共同通信が分析して記事配信を行った。それによると、5月の大型連休期間の全国主要都市の人出(国内居住者のみ)は60地点の88%に当たる53地点で前年に比べて減少が判明。最も落ち込みが大きかったのは札幌で約16%減少。観光拠点となる地方の政令指定都市の減少率が大きく、仙台や名古屋も2桁マイナス。一方、新幹線が延伸した福井は増加率が最大で約9%増。円安に伴う物価高による節約意識の高まりや訪日客増加による宿泊費の上昇などで、国内旅行を控える動きが生じたようだ。
国内観光の沈滞化に伴って「暮らし観光」への関心が高まっている。「暮らし観光」は、写真家のMOTOKOさんが2019年から使い始めた言葉とのこと。その背景には、ただただ消費を促して観光地に住む人がしんどくなるインバウンド観光への不信感がある。MOTOKOさんは2013年から「写真でまちを元気に!」というスローガンで地域の人々や暮らしを写真に撮ってSNSで発信し、観光や移住につなげる「ローカルフォト」プロジェクトを推進。観光地でないところで、旅人も住民も共に幸せになれる「暮らし観光」を日本各地に広めるチャレンジを続けている。
会員向け記事です。