【私の視点 観光羅針盤 433】西表島の海神祭(ハーリー) 吉田博詞


 先日、沖縄県竹富町西表島白浜で行われた伝統行事・海神祭に参加させてもらった。沖縄各所に伝統的な祭りが息づく中でも、海神祭や豊年祭は大きな祭りとして位置付けられている。この海神祭は、沖縄全体で旧暦5月4日あたり(新暦では5月下旬から6月ごろ)に実施されることが多い。漁業関係者を中心として海上平穏や豊漁、住民の無病息災を祈願する祭りで、明治時代に沖縄本島糸満の漁夫たちにより八重山諸島にも伝えられ、今でも根付いている。

 海神祭(ハーリー)はサバニ舟での舟漕ぎ競争の祭りで、ハーリーの鉦(かね)が鳴ったら梅雨が明けるともいわれ、夏を迎える大事な行事である。白浜での海神祭は、大きく分けて3部構成で、豊漁や海上安全を祈る漕(こ)ぎと、われわれが参加させてもらった職域対抗レースと字西表地区の四つの集落の対抗戦で編成されている。

 海神祭のために各所から帰って来る人も多く、年配のおじぃやおばぁ、小さい子供たちも一緒になりながら、集落ごとに大人たちが漕ぐ様子を応援する姿に、地域のアイデンティティを感じることができた。白浜、干立、祖内、舟浮の集落人口はどこも50人から100人程度で、それぞれがこの海神祭までに何度も練習する中で、集落ごとのつながりを深めており、かつかっこいい大人像が形成される好循環が印象深いものであった。

 前夜祭では、各種食べ物や飲み物は各団体から提供され、いわゆる出店的なものはない。カラオケ大会等の景品もオリオンビールや泡盛、パイナップル等が何箱も出てくるように豪華であり、それらは地域の商店で購入されたものばかりで、しっかりと地域経済を回していた。観光客はほとんどおらず、見せる祭りではなく、地域の方たちが自分たちのために楽しむ場として守り続けている様子が何よりも驚いたことである。

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