日本では1934年に最初の国立公園として3カ所が指定された。31年に施行された国立公園法(自然公園法の前身)に基づく指定で、瀬戸内国立公園、雲仙国立公園、霧島国立公園が選ばれた。その後に日本国内各地(および第2次大戦前には台湾と朝鮮半島)で数多くの国立公園が指定された。最初の指定から90年の歳月を経て、今年6月25日付で「日高山脈襟裳十勝国立公園」が全国で35カ所目として指定された。
新しい国立公園は13市町村にまたがり、陸域面積が国内最大規模で、南北約140キロに連なる日高山脈の原生の自然が魅力的な公園である。日高山脈の最南端の太平洋に達する襟裳岬周辺はゼニガタアザラシの生育地であり、近くの様似町のアポイ岳は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界ジオパークに認定されており、固有の高山植物の宝庫だ。
日高山脈はプレートの衝突で隆起した非火山性の山脈で、切り立った稜線で傾斜が厳しいために砂防工事など人手が入っていない原生流域で、希少な高山植物だけでなく、シマフクロウやエゾナキウサギなどの希少な動物も数多く生息している。残念ながら、私は日高山脈を縦走した経験がないが、写真集や山岳画家の坂本直行さんの絵などを通して見る日高山脈のパノラマ風景や高山植物は魅力的である。
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