8月初旬に「北海道庁の後志総合振興局は、道職員が観光業の副業に携わることを事実上、解禁した」というニュースが報じられた。私はそのニュースに接して複雑な想いを感じた。
公務員は本来「公務に専念し、公共利益のために全力を尽くす義務」を負っている。ところが安倍政権は「未来投資戦略2018」において「公務員の兼業を公益活動に限り認める」と明記し、19年に働き方改革の一環として国家公務員の副業を解禁した。ただし、NPO法人など公益性の高い活動に限って認められており、営利目的となる活動は禁止されている。地方公務員については国家公務員に準じるかたちで副業が解禁されており、全国の地方公共団体で既にさまざまなかたちで副業が認められている。
また、岸田政権は昨年11月に「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定しており、円安を生かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化を強調している。それによると、訪日外国人旅行消費額を年間5兆円とする目標の速やかな達成に向け、足元の円安メリットを生かしてインバウンド消費のさらなる拡大を含め、観光立国に向けた取り組み(観光地・観光産業における人材不足対策、訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備の支援など)を推進することが盛り込まれている。要するに安倍政権・菅政権による「インバウンド観光立国」政策の継続を表明している。
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