【私の視点 観光羅針盤 443】世界と比較する日本の美術館・博物館 吉田博詞


 7月に「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」(東京・豊洲)の年間来場者数250万人が、単一アート・グループによる美術館における世界で最も多い来館者数としてギネス世界記録に認定されたとの報道があった。2023年4月~2024年3月の1年間に250万4264人が訪れたことが認定されたという。2019年の「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」(219万8284人)に続いて、チームラボの美術館としては二つ目のギネス世界記録認定となった。単一アーティストの美術館として、オランダのゴッホ美術館(168万人、2023年)やスペインのピカソ美術館(104万人、2023年)などを大幅に上回っていることが評価ポイントであるようだ。

 実際に訪れてみると、スタッフの多くが外国籍で、多数の言語が飛び交い、表記も英語・日本語・簡体字・ハングルの4言語で対応している。さらに、感じるアートなので、説明がなくても楽しめるのがポイントといえるだろう。昨今の日本の先進的なアートクリエイティブがこのように評価され、国内外の人々が来訪する場所になっていることは非常に喜ばしい。

 では、単一アーティストではない美術館の来訪者数はどうなのだろうか? 2023年において、1位はパリのルーブル美術館で886万人。2位はバチカンのバチカン美術館で676万人、3位ロンドンの大英博物館582万人、4位ニューヨークのメトロポリタン美術館536万人、5位ロンドンのテート・モダン474万人、6位ソウルの国立中央博物館418万人となっている。アジアでは、15位に香港のM+(エムプラス)279万人、21位に東京の国立新美術館225万人が続いている。

 国内で見ると、22位に金沢の金沢21世紀美術館223万人、29位に東京の東京都美術館192万人、80位に東京の東京国立近代美術館88万人が入っている。統計手法の違いなどがあるのかもしれないが、世界各地で国立の博物館がランクインしている中で、東京国立博物館が入っていない結果にはもったいなさを感じた。一部データによると、東京国立博物館の年間予算は20億円で、ルーブル美術館の17分の1、大英博物館の5分の1、韓国国立中央博物館の3分の1といった集計も出ている。

 これからのインバウンド誘客を考えると、民間の作品主導というのは一つの大きな兆しである中で、チームラボが2025年初頭にチームラボプラネッツ隣接で大規模な新エリアをオープンすることが発表された。新エリアは「捕まえて集める森」「運動の森」「学ぶ!未来の遊園地」で構成され、10以上の作品群が展示される予定だという。こうした良い報道が続くことはうれしいことである。半面、文化行政としても、世界的に訪れたい代表的博物館としての活力を上げていくことで、官民挙げて東京が魅力的な文化都市に成熟していってくれることも期待したいところだ。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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