この時期になると日本国内はもとより、世界のあらゆるまちがクリスマスモードに包まれ、どことなく幸せな雰囲気があふれてくる。さて、このクリスマスの一大行事の一つであるサンタクロース文化は、いつからどう根付いたのだろうか。
サンタクロースの起源は、約1700年前のローマ帝国の時代、小アジア南西部ミュラ(現在のトルコ)に住んでいたセント・ニコラウスというカトリックの司教にさかのぼる。彼は生涯を通じて慈善事業に尽くし、誰よりも子供好きと知られていた。このセント・ニコラウスが死後も守護聖人として崇められ、その後伝説となり、貧しい子供たちにプレゼントを贈るという行為が習慣となり発展したのがクリスマスプレゼントの始まりとされている。
その後、中世になって、この習慣がヨーロッパ各地に広まる中で、オランダでは「シンタクラース」という名に代わり、煙突から入るイメージも定着。北欧ではトナカイに乗ってやってくるイメージも加味された。17世紀にオランダ人によってアメリカに広められた際、シンタクラースの英語読みがサンタクロースとなり、現在の呼び方が誕生したという歴史があるようだ。
現在のサンタクロースのイメージといえば、赤い衣装と白いひげが定着している。これは、1931年にコカ・コーラ社とアメリカ人画家が「真っ赤な衣装と白いあごひげ」のサンタクロースをつくり出したことがはじまりとされている。
また、現在においてサンタクロースの正式な故郷はフィンランドのラップランド地方とされ、その中心地ロヴァニエミには1985年にサンタクロース村がつくられた。村にはサンタクロースの部屋、サンタクロース郵便局、クリスマスグッズの店もあり、1年中いつでもサンタクロースに会える場所となっており、年間で何十万もの人々がサンタクロースに会いにやってきている。サンタクロース郵便局には、世界199カ国の子供たちから毎年何十万通もの手紙が届き、全部に目を通しているとされ、いかにサンタクロースが世界中の子供たちから愛されているかがうかがえる。
日本でのクリスマスの歴史もひも解いてみたい。クリスマスがはじめて祝われたのは、1552年に現在の山口において、フランシスコ・ザビエルに関係する宣教師が行ったものだとされている。明治時代になると徐々に普及が進み、サンタクロースも登場、昭和初期ごろには日本中で祝われるようになったとされている。
こうしてクリスマスやサンタクロースの歴史を知ると、愛にあふれた物語が時代を超えて一つの文化として世界中で定着していることが分かる。欧米では、クリスマスは家族で過ごす大切な時間であり、クリスマスマーケットなどとともに1年の中でも大事な時期とされている。文化的な背景や慈愛あふれるストーリーを味わいながらクリスマスの時期を過ごすことで、ちょっとしたもてなしの仕方も変わってくるだろう。各地で家族やパートナー、地域のつながりを感じながら心が温まる時間を分かち合いたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)
(観光経済新聞12月9日号掲載コラム)