令和6年が終わり、令和7年が始まる。平成の30年を経て令和が始まって7年目突入となる。時代や世代間の価値観の変化を語る際に、昭和・平成・令和をうまく使い分けて表現されることも多くなった。
令和7年、2025年は時に「昭和100年」というキーワードで話題に挙がることがある。この昭和100年という概念をきっかけに、昭和という時代を見直す必要性を感じる瞬間も多い。
かくいう私も昭和56年生まれであり、社内のカルチャーを表現する際には昭和的な会社だと伝えている。また、お邪魔させてもらう地域には昭和文化が今も残っているので、そうした背景を理解した対応が求められるということを社内でも伝えながらお仕事をさせてもらっている。これは昭和カルチャーを揶揄(やゆ)したものでなく、私の中ではリスペクトしたものでもある。
時代は令和になれど、昭和のどこかあたたかい人とのつながりに憧れや居場所を求める若者が少なくないと感じるケースも多い。観光業界において、DXやAIの加速で各種効率化が進み、いろいろなものがどんどん進化していくことで全体の生産性向上は期待したいところである。
併せて、昭和の良さとして再認識されるのが、人と人とのつながりや、あたたかみのある人間らしい生活といったものであるように感じる。どこかレトロなものに趣を感じるのも、そこに生活感や哀愁といったものだけでなく、令和のわれわれが忘れつつある幸せの概念があるのかもしれない。
ウェルネスやウェルビーイングといった概念やオーセンティックというキーワードがさす幸せや地域文化の在り方といったものの答えは、新たに作り出すものではなく、どこか昭和の中で当たり前にあったものの中にヒントがあるように感じる。地域の共同体がしっかりと機能し、向こう三軒両隣でつながりを持ちながら、地域の祭りにひとつのアイデンティティを見いだして生活する。水や景観、食資源といったものも地域共有の財産として分かち合いながら暮らす姿には、不便さや面倒臭さもあったかもしれないが、そこに自分の居場所を見つけ、共同体の中で生きていくということを体感していたのだろう。
もちろん昭和の時代も工業化がもたらす弊害があったり、やんちゃなことも多かったりと必ずしもすべてが美化されるものではない。ただ、グローバル化・世界の均一化・デジタルによる効率化が進む時代において、本当の幸せとは何かを考える上で、昭和の時代に当たり前にあったものの価値を再認識しながら、令和版にアップデートしていくという動きをとることができれば、より選ばれる、そして帰ってきてもらえる地域になっていくだろう。
この令和7年を昭和100年として、幸せの在り方を考える年として、地域文化再生のひとつのきっかけにしていくことができれば、次の100年にも続いていく足がかりとなるだろう。万博のテーマでもある「いのち輝く」という概念を昭和からもヒントをもらいながら考える年にしていきたいものだ。
(地域ブランディング研究所代表取締役)
(観光経済新聞2025年1月1日号掲載コラム)