【私の視点 観光羅針盤 464】地域の魅力度と幸福度 石森秀三


 米国では2期目のトランプ政権が始動し、「米国第一主義」のスローガンの下で世界に大きな脅威を与えている。トランプ大統領は関税強化をディール(取引)材料に多用しており、既に輸入自動車に対する関税強化措置の実施を表明している。日本が対象になれば対米輸出への大打撃は必至だ。

 現在の日本は世界を主導できる産業が無いために、超円安状況で外貨を稼いでいる観光産業への期待が高まるとともに、観光魅力への関心が喚起されている。ブランド総合研究所は毎年「都道府県魅力度ランキング」を公表している。ブランド総研は全国の消費者に対して、都道府県の魅力度、認知度、情報接触度、居住意欲度、観光意欲度、食品想起率、食品以外想起率などについて調査を行い(約3万5千人が回答)、ランキングを公表している。

 24年総合ランキングのトップ10は、1位北海道、2位以下は順に京都府、沖縄県、東京都、神奈川県、福岡県、大阪府、長野県、静岡県、石川県であった。ボトム10は、47位佐賀県、46位から順に埼玉県、茨城県、鳥取県、山口県、徳島県、群馬県、滋賀県、栃木県、島根県であった。

 一般社団法人日本総合研究所(寺島実郎会長)は12年から1年おきに「都道府県幸福度ランキング」を公表している。幸福は主観的・相対的概念であるが、日総研は地域の幸福度を客観的に測るために公的統計データの数値を活用している。基本指標として、人口増加率、1人当たり県民所得、選挙投票率、食料自給率、財政健全度の5項目で基礎的な地域力・行政力を評価している。また地域の幸福に資する具体的要素を構成する指標として、(1)健康、(2)文化、(3)仕事、(4)生活、(5)教育、の5分野にそれぞれ10ずつの分野別指標を計50設定している。さらに時勢を反映して多面的評価を行うために追加の30指標も設定。これらの全85指標によるビッグデータの分析を行い、ランク付けを実施(詳細は、日総研編『全47都道府県幸福度ランキング(2024年版)』日総研出版、を参照)。

 24年の都道府県幸福度ランキングのトップ10は、1位福井県、2位以下は東京都、富山県、長野県、石川県、鳥取県、岐阜県、山形県、山梨県、滋賀県であった。ボトム10は47位沖縄県、46位から順に青森県、大阪府、高知県、長崎県、愛媛県、宮崎県、兵庫県、北海道、福岡県。

 北陸3県(福井、富山、石川)がトップ5に入っており、3県共に仕事・生活・教育分野の各指標の評価が高い。一方、魅力度では福井県31位、富山県19位、石川県5位の評価。北海道は魅力度が1位だが、幸福度は39位、特に財政健全度47位、健康分野47位で、仕事や生活分野の評価が低い。同様に沖縄県も魅力度は3位だが、幸福度は47位で、北陸3県とは異なって仕事・生活・教育分野の評価がいずれも47位だ。

 03年に小泉政権の下で「住んでよし、訪れてよしの国づくり」という観光立国の理念が策定されたが、現実には「住んでよし」と「訪れてよし」の実現はそれぞれ極めて容易ではない地域課題であることが明白になっている。世界的に未来を予測し難い大混迷時代を迎える中、日本の観光立国政策のグレートリセットが必要不可欠になっている。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)


(観光経済新聞2025年2月24日号掲載コラム)

 
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