
2025年に入り、世界遺産の各所で進む規制強化や入域料金の値上げが話題になっている。主要な場所の最新の動向を整理してみたい。
世界文化遺産の富士山においては、2025年山梨県の吉田ルートおよび静岡県側の富士宮・御殿場・須走の3ルートすべてで、1人当たり4千円の通行料を事前決済で徴収する。また、午後2時から午前3時までを入山規制時間とし、山小屋宿泊予約者以外の入山が制限される。さらに、山梨県側では1日当たりの登山者が4千人に達した場合、ゲートを閉鎖する措置が導入される。静岡県側では、富士山の保全や安全登山に係るルール・マナーの事前学習(eラーニング)の修了が義務付けられる。2024年に山梨県側において1人当たり2千円の通行料が導入され、14万8913人から2億9782万円が徴収された。これらは安全対策費等に充てられるようで、2025年はさらに強化されるだろう。
世界自然遺産の沖縄・西表島においては、2025年3月より自然環境の保護を目的に、五つのフィールドが「特定自然観光資源」として立ち入り制限フィールドに指定され、1日当たりの立ち入り可能人数が制限されることになった。ヒナイ川(ピナイサーラの滝)200人、西田川(サンガラの滝)100人、古見岳30人、浦内川源流域(横断道、マヤグスクの滝)50人、テドウ山30人といった具合で、登録引率ガイドの同行等が入域の条件となっている。
世界文化遺産の白川郷では、白川村が2025年10月より合掌集落近くの三つの村営駐車場の料金を値上げする。普通車と軽自動車は現行千円を倍の2千円に、バス等の大型車やマイクロバスは現行3千円を3倍以上の1万円へと引き上げる。さらにGWやお盆休み等の繁忙期は、さらなる割増料金の導入を検討しているという。ツアーバス等の大型車が前年対比36%増えたことで、オーバーツーリズム対策が急務となった中での対処策である。
テーマパークの1デーパスを見てみると、東京ディズニーリゾートは2001年に5500円だったものが、2023年から1万900円に。USJも2001年の開業当初5500円だったものが、2025年5月からは1万1900円に値上げされる予定だという。
テーマパークの入場料と比べると、観光地における入域料金等は相対的に安価とも捉えられるだろう。各所の徴収料は受け入れ環境の整備や地域資源の維持管理だけでなく、地域住民の健全な生活の保障にもつながっていく好循環が期待される。ただし、これらの入域制限や徴収が教育的見地の機会の排除や、これまで当たり前に生活圏として利用していた地域の方々の入域制限につながらないようにする仕組みや配慮が求められる。単なる制限ではなく、地域内への経済波及効果やシビックプライドの醸成といった好循環をどう構築できるか、各地で叡智(えいち)を結集し、よりよい切磋琢磨の連鎖を期待していきたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)
(観光経済新聞25年3月17日号掲載コラム)