
国際観光旅客税、いわゆる出国税が2019年1月から導入されて6年が経過している。日本から出発する航空機のみならずクルーズ船においてもチケット料金に上乗せして徴収されている。訪日外国人だけでなく、日本人の出国者も対象で、現在観光庁における施策の財源にもなっている。2024年の訪日外国人数は3687万人、出国日本人数は1301万人であり、合計4988万人となる。1人当たり千円を徴収しているので、約490億円という金額になるのも納得できる。2019年度443億円、2020年度10億円、2021年度18億円、2022年度126億円、2023年度399億円と推移しており、2024年度は420億円程度の見込みで、2025年度も480億円程度が予測されていて、一つの大きな財源だ。
この出国税の金額アップや使途の議論が、与党の部会で始まったと報道されている。海外でみると、オーストラリアで70オーストラリアドル(約6500円)、エジプトでは25USドル(約3700円)といった具合で徴収されているのは一般的である。すでに日本でも徴収されている旅客サービス施設使用料・旅客保安サービス料と合わせて徴収されるのは、世界的に一般的だと捉えても問題ないだろう。
ちなみに旅客サービス施設使用料は、各空港における国際線主要ターミナル出発で、成田2460円、羽田2950円、中部2620円、関空3310円、福岡2530円であり、それと併せて旅客保安サービス料がそれぞれ数百円加算されている。
これまで千円の徴収だった出国税分に関して、他国を参考にしながら3千~5千円への引き上げを検討しているという。単純計算で現状の3~5倍になるということは1500~2500億円の財源獲得を見込んでいる計算となる。2025年度で530億円の観光庁の予算がこの3~5倍規模になると、実施できる施策も大幅に増えることが期待できる。
これまでの当税の目的は、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための財源確保で、訪日誘客のプロモーションや受け入れ環境整備が中心だった。それに対し、昨今の訪日客急増やオーバーツーリズム対策も含めた部分に使途を拡大し、整備を加速していく方針のようである。
方向性としては大いに賛成である。ただ1点留意してもらいたいのは、出国日本人数をみると、コロナ前の2019年は2008万人であったのに対し、2024年は1301万人と、まだ6割強にしか回復していないことだ。物価高騰・円高傾向から海外旅行へのハードルが高まっており、それが足かせにならないような調整も期待したい。
観光がこれまでフリーライダーを許容する構造であったところから、受益者負担に転化していくのは非常によい流れだと考えている。ただし、国内の需要を排除・制限しない最大限の努力も同時に行われる構造であることを願いたい。今後も各地で宿泊税や入域税等が拡大されていくことが予想される中で、しっかりとした調整のもと制度設計がなされていくことを願っている。
(地域ブランディング研究所代表取締役)
(観光経済新聞2025年4月7日号掲載コラム)