前回は、配偶者に一定の財産を贈与した場合の特例のお話をした。配偶者に贈与するよりは、子供や孫に贈与をするという方が一般的かもしれない。そこで、今回は一般的な贈与と父母等から受ける贈与について説明したい。
そもそも、贈与というのは一つの契約で、「あげる側」「もらう側」、双方が了承して成立する契約であるから、一方的にあげるなどという行為は贈与契約ではない。これは、よく相続税の税務調査などで指摘されるが、あげる側が一方的に贈与したとしても、もらう側がそれを認識していなければ贈与契約は成立しておらず、いわゆる名義預金とされるケースが散見される。たんすから、子供や孫名義の通帳がいっぱい出てきたというシーンをよく見かける。
さて、贈与税の仕組みはどうなっているだろうか。贈与を受けた者がその一暦年で110万円を超える場合は一定の税率(10%~55%)が課される仕組みになっている。およそ3千万円を超える贈与をすると最高の55%の税率が適用される仕組みだ。相続税よりも重い税金が課されている。
ここからは、平成27年以降の改正論点だ。今までは、自分の父母等から受ける贈与も、遠縁の親戚や赤の他人から受ける贈与も同じ税率を適用されていたが、改正があってから、父母等から受ける贈与の場合は一般の贈与よりも優遇された税率を適用されることとなった。紙面の都合上詳しい税率を示すのは割愛したいが、贈与額にもよるが、5%~10%程度低い税率が適用されている。昨今の政策により、高齢者から若者に財産を早く移転させるというものらしい。
筆者も職業柄、毎年贈与税の申告の手続きを依頼されるが、いくら税金がかかるとはいえ一定の財産(特に現金預金)をもらえるということはうらやましい限りである。
(髙村税理士事務所代表、髙村健一)