またまた、大好きなラスベガスに行ってきた。この街の魅力の一つは、アメリカの一都市に居ながらにして世界各国の雰囲気を味わえるところだ。古代エジプトがテーマのホテル「ルクソール」は建物自体がピラミッド型で、入り口には巨大なスフィンクスが鎮座している。マンハッタンを模した「ニューヨーク・ニューヨーク」には自由の女神像がそびえ立ち、エッフェル塔と凱旋門を有する「パリス」など、見ているだけでワクワクする。
中でも、ひときわ高い人気を誇るのが「ザ・ヴェネチアン」だ。ヴェネチアをモチーフとし、鐘楼やサンマルコ広場、リアルト橋などがホンモノそっくりに造られ、建物の中を運河が流れ、行き交うゴンドラに乗ることもできる。船頭が歌うカンツォーネを聴くと、思わずヴェネチアにいるのかと錯覚してしまう。
同館と隣接する「ザ・パラッツォ」と合わせ客室数は約7千室、大型コンベンション施設やカジノ、ショッピングモールなども併せ持つ巨大統合型リゾートだけに、飲食店も約60店舗近くにのぼる。
超高級店からテイクアウト専門のサンドイッチ屋までさまざまだが、どうしても行ってみたかったのが、「ブション」。米国人初のミシュラン三つ星2店舗獲得シェフ、トーマス・ケラーの店である。ナパで予約が取れなかったので、リベンジだ。とはいえ、スケジュールは一杯。そこで、朝食を予約。館内で2店舗もベーカリーを営業しているから、おいしいパンも期待できそうだ。
重厚なドアをくぐり抜けると、そこはさながらフランスのビストロ。太陽サンサンのテラス席の気持ちの良さと言ったら! 同行者たちは、イングリッシュ・マフィンにポーチドエッグとハムをのせ、オランデーズ・ソースをかけた「エッグ・ベネディクト」、さいの目に切ったハウスメイドのスパイスソーセージに、好みの玉子料理を載せる「ハッシュ・ド・メルゲーズ」、店名を冠した「ブション・バーガー」を注文。
筆者は「クロック・マダム」。食パンが一般的だが、ここではブリオッシュだ。ハムとチーズを載せてトーストしたものに、モルネー・ソースが掛かっていた。ベシャメルに卵黄とチーズを加えたもの。やっぱり一手間かけている。ここまでなら「クロック・ムッシュ」、目玉焼きを載せると「クロック・マダム」になる。ナイフを入れたときの卵黄とろぉ~りがたまらない。
もちろんすべてお味見させていただいたが、最初に運ばれてきた麦の穂型のフランスパン「エピ」も含め、いずれも美味だった。自家製ソーセージだけでも手間が掛かるのにさらに調理したり、ハンバーガーにはプライム・ビーフを使用するなど素材にこだわったり、サスガ米国ナンバーワンと言われるシェフの店だ。ラスベガスの朝食はバイキングスタイルのバフェが主流だが、完成度の高いお料理を、ゆったりと流れる時の中でいただくと、とってもぜいたくな気分になれる。ステキな朝食に、乾杯!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
エッグ・ベネディクト
ハッシュ・ド・メルゲーズ
ブション・バーガー
クロック・マダム
フランスパン「エビ」