現在、北海道内17カ所、神奈川県箱根と湯河原で3カ所の宿泊施設を経営する、「野口観光グループ」。北海道観光業界のリーダー野口秀夫社長が、道外に初進出を果たしたのが、2011年箱根仙石原にオープンした「きたの風茶寮」。コンセプトは「箱根の歴史にきたの風のおもてなし」。源泉掛け流しの露天もしくは展望風呂付き全10室という、和のオーベルジュだ。
道外初というだけでなく、道内は大型の宿ばかりなので、規模としても初の試みであった。その大きな契機に付けた宿の名にある「風」という文字は、野口社長の好きな言葉だそう。同氏の思い入れを表すかのように、その後「風」という文字を冠した宿が、道内で三つ誕生している。
まずは、2012年に洞爺湖畔の「ザ レイクビューTOYA 乃の風リゾート」、次いで2015年に北湯沢温泉の「緑の風リゾート きたゆざわ」、そして2016年には函館湯の川温泉の「HAKODATE 海峡の風」がそれぞれオープン。いずれもハッキリしたコンセプトを持つ宿だ。同グループの宿のファンである筆者、三つのうちまだ訪れていなかった最後の一つ「海峡の風」に先日お邪魔した。
函館・道南エリア観光活性化のため、「湯元啄木亭」の別館として生まれたという同館のコンセプトは、「大正ロマン・昭和レトロ・平成モダン」。歴史情緒あふれる街にふさわしい空間と、港町ならではの新鮮な食材を生かした食事処、湯の川温泉の名湯がウリ。
コンセプト通り、大浴場はノスタルジックな雰囲気の「大正ロマン風呂・夢の湯」、現代的な空間の「平成モダン風呂・Relax21」の二つがある。もっと温泉を楽しみたい人は、廊下でつながった隣の「啄木亭」最上階にある、開放的な大浴場や露天風呂も利用可能だ。
客室は、レトロな「大正ロマン」か、スタイリッシュな「平成モダン」から選び、お食事も全く雰囲気の違う3カ所からチョイスできるようになっている。
一つ目は、朝市夜市バイキングと称した「青函市場」。昭和レトロをテーマに、函館朝市の活気を再現した空間で、津軽海峡の新鮮な魚介類を中心に、道内の厳選食材をバイキング形式で豪快に味わえる。
二つ目は、西洋ハイカラ料理「函館銀座軒」。昔ながらの懐かしい洋食に、低温調理やエスプーマを取り入れたモダンフレンチを融合させた斬新なコース料理を、大正ロマンデザインの空間で楽しめる。
三つ目は、Wine&Sushi会席「Blue Seasons」。ネーミングからも分かる通り、ニューヨークの寿司(すし)バーのようなレストラン。もちろんテーマは平成モダンで、ジャズが流れるシックな店内で、函館・青森産の鮮魚を使った本格的な江戸前寿司を、ワインや日本酒とともに堪能できる。
お仕着せでなく、選べる楽しみがあってうれしい。どれも魅力的だから迷ってしまうが、野口社長おススメの寿司会席をチョイス。果たしてそのお味は…? 次号をお楽しみに!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。