前号に続き、「ロカボ」こと、ゆる糖質オフについて。
2013年、筆者が役員を務めるお弁当製造販売会社「神田明神下みやび」に、糖質オフのプロが仲間入りした。彼の前職は、日本初の糖質制限中国料理店料理長。TV番組「ガイアの夜明け」にも取り上げられ、何と偶然にも筆者はそのオンエアを見ていた。
中国で作られる、硬い豆腐を圧縮して脱水した「押し豆腐」の千切り「豆腐干絲(かんす)」を麺料理に使い、ふすま粉で蒸しパンを作るなど、工夫を凝らして糖質カットに挑戦している様子に驚嘆したのを思い出す。
せっかくそんなプロが入社してくれたのだからと、早速糖質コントロール弁当をリリースしたのだが、当時はまだ糖質というもの自体の認知度も低く、お世辞にも売れたとは言えなかった。あの頃は、糖質関連商品を仕掛けるには、まだまだ時期尚早だったのだ。
それでも懲りずに数種類の糖質コントロール弁当を開発、販売したが、決して無駄ではなかった。平成28年に、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が、時代のニーズに応えて宿泊施設でも糖質制限食を提供できるようにしようと、「健康志向のメニューづくり」という冊子を発行。筆者も推進委員として原稿執筆やメニュー提案を担当させていただいたが、その際それまでの経験が大いに役に立ったからだ。
そして今や、前号で述べた通り食品業界もロカボ・ブームに沸き、糖質は糖尿病だけでなくダイエットの敵!とテレビでも宣伝されている。低糖質弁当販売のチャンス到来である。
とはいえ、われわれの商品の主役は、炭水化物の代表選手であるご飯。2日で約1トンものお米を使っているのだ。コレを削るのは結構難しい。また、低糖質でも楽しく召し上がっていただくには、見た目も重要。目指すはロカボとインスタ映えの共存だ!と頑張った。
そうしてこのたび出来上がった「ロカボ弁当」(商標登録出願中)、小さ目の八角形の箱の中身は、手前味噌(みそ)だがカワイイ出来栄え。糖質の低い魚と鶏肉をメインに、煮物や野菜のマリネ、煮玉子などバラエティーに富んだお料理と、体に良いキノコ類、海藻類も投入。商品規格書の品目が22種類に及ぶ、彩り豊かなお弁当に仕上がった。いまだ某百貨店だけの限定販売だが、売れ行きは上々である。
秘策はいくつかある。例えば、小さな海老の天ぷらを入れているが、糖質的には衣がNGでも、少量なら問題ない。ご飯も雑穀米にすることで、お弁当全体の糖質を含む炭水化物量は、26.6グラムに抑えられている。
あれもダメ、これもダメと、食べてはいけないモノばかり考えるのは憂鬱(ゆううつ)だが、少量でも好きな物を食べられれば口福だ。それに、楽しくなければ続かない。
ロカボがマイブームといっても頭の中だけ。仕事柄試食が多くて実践は難しいけど、プライベートぐらい頑張りたい。大好きなワインは糖質が低いから、今夜も飲みつつ楽しく、ゆる糖質オフといきましょう♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
ロカボ弁当