前号の続き。そもそも、なぜプラごみを減らさなきゃいけないの?なんてノンキなことを言っているアナタ! プラごみは海洋汚染の元だが、もっとオソロシイ話もあるのだ。
プラスチックが、劣化などのさまざまな理由で細かく砕け、5ミリ以下になった「マイクロプラスチック(以下MP)」というモノがある。実は今、魚の体内や海水からつくられた天然塩からも、このMPが検出されているという。ヨーロッパでは、牡蠣(かき)などの貝類を頻繁に食している人は、年間1万1千個ものMPを摂取している可能性があるとの研究結果も出ている。海だけでなく、既に人体もMPに汚染されているのだ。
打開策は「プラスチックを捨てない、使わない」しかない。米国ニューヨーク市では今年1月1日から、使い捨て発泡スチロール容器の使用を禁止する法律が施行され、猶予期間を経て7月1日から罰金が科せられるようになった。
持ち帰り用の温かい飲み物やハンバーガーを提供する飲食店が、猛反発したのは言うまでもない。発泡スチロール禁止法が可決した2013年以来、反対する業界の訴訟により施行が延期され、今年やっと実現にこぎ着けたのだ。
残念ながら日本では、前号で述べた通り「使い捨て弁当容器は代替品が困難」として規制が見送られている。お役所が諦めちゃうくらい、ほとんどの業者が発泡スチロールなどの石油系プラスチック容器を使っているからだ。
プラスチックは「分解されない」性質が環境汚染につながってしまう。だが、実は植物由来で土に還る素材の「脱石油系プラスチック」が存在する。その名は「PLA(ポリ乳酸)」。とうもろこしやサトウキビからつくられているのに、合成樹脂という意味で広義のプラスチックに分類されるため、日本ではプラマークの表示が義務付けられているが、100%生分解性だ。
我田引水だが、筆者が役員を務める「神田明神下みやび」では、「できることから、少しずつ。食べておいしく、地球にやさしいお弁当を」というスローガンを掲げ、いち早くお弁当容器の脱石油系プラスチック化に取り組んできた。
キッカケは1件の注文だった。それは、石油系プラを一切使わないお弁当というもの。元々紙製パッケージが主力だからハードルが低かったとはいえ、試行錯誤の連続だった。プラカップの替わりに紙カップにすると、汁がしみてしまう。食材によって天然笹の仕切りや経木を使うなど、工夫が必要だった。箱のふたを閉める前、表面にかける乾燥防止フィルムも、苦肉の策で和紙にした。
そんなわれわれに福音をもたらしたのが、PLAのトレーだ。使用感はプラスチックと同じだが、環境にやさしい生分解性。これらのオリジナル容器を使った商品を「エコ弁」シリーズとしてリリース。画期的だと、賛同して下さる方も多い。
できることから、少しずつ。明日はお買い物にエコバッグを持って行こう!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。