【竹内美樹の口福のおすそわけ 287】おいしさのヒミツ 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹


 東京日本橋にある「ロイヤルパークホテル」の鉄板焼「すみだ」。最上階からの眺めと共に、目の前で調理される極上の食材を堪能できるこのレストランで、同ホテル常務取締役総支配人笹井高志氏が厳選して下さったメニューをいただく機会を得た。冷製の前菜に始まり、スープ、活伊勢エビコライユ(エビミソ)ソース、焼き野菜、お肉、お食事、デザートのコース。食材選びや技術など、シェフの細やかな配慮が随所に散りばめられていた。

 例えば焼き野菜。ナスとてタダ者ではない。太く長く、つややかな紫色のそれは、「熊本赤ナス」。熊本の伝統野菜で、栽培に手間が掛かる上、皮が薄く実が軟らかいため流通の際注意が必要なこともあり、非常に高価だ。大きいが味は繊細で、アクや種も少なく、生でも食べられる。いただいたそれは香ばしく焼かれ、とろっとろでジューシー、甘味もある。「おたんこなす」とやゆされるくらいナス好きの筆者にはたまらない。

 お肉は宮崎牛。和牛のオリンピックと呼ばれる「全国和牛能力共進会」肉質部門の首位3連覇を成し遂げ話題となったブランド牛だ。マーブル模様の美しいサシは、まさに垂涎モノ。

 焼く前に、シェフはお肉をお皿に載せ、鉄板の上に置いてふたをした。良い焼き加減にするためには、冷蔵庫から出した肉を牛の体温と同じぐらいにするのがベスト。いろいろ試した結果、この方法にたどり着いたのだそう。ふたを取ると、お肉の表面にうっすら脂がにじんで、人間で言えば汗をかいたような状態に。焼き上がりはモチロン火の通り具合が絶妙で超美味!

 特筆すべきは、締めのひつまぶし。何とぜいたくにも、うなぎだけでなくフォアグラ入り! このコラボはまったく思い付かなかったが、両者とも甘めのタレが合うのだから、相性抜群。最後はお薬味と共に出汁(だし)茶でお茶漬け。あぁ口福。

 食後、ラウンジで同館人気のデザートをいただくことに。一つは、かき氷をマロンシャンテリーのごとく生クリームで包んだ「スノードームケーキ」。ふわふわ氷に細工を施すのだから、パティシエの技術を要する。生クリームとのハーモニーにうっとり!

 もう一つは、創業200年以上の地元老舗和菓子店「榮太樓總本鋪」とタッグを組んだ「あんみつパフェ」。パンナコッタの上に、伊豆産天草の寒天、北海道十勝産小豆の餡(だし)、バニラアイスとフルーツ、沖縄産黒糖黒蜜と生クリームのエスプーマが載せられ、黒蜜をかけていただく。女性の商品開発チームが企画したというこのスイーツ、和の伝統の味と洋のテイストがマッチし、絶品だった。

 全ての美味は、産地にこだわり、食材を厳選し、技を磨く、料理人のたゆまぬ努力で生まれる。意表を突く組み合わせの妙も、スタッフの創意工夫があればこそ。それはこの素晴らしいチームを率いる、笹井GMのリーダーシップのたまものだ。おいしさのヒミツはにぎわいの秘密でもある。また食べに行きたいもん!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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