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「宅配ピザ」という呼び方は「ドミノ・ピザ」が始めたと言われている。それまでの出前と、どう違うのか?
出前という商売のスタイルは、江戸時代中期ごろからあったらしい。当時そばが流行し、吉原の遊女たちも食べたいのに、遊郭から自由に出られないので届けてもらったのが始まりとか。やがてそば屋だけでなく、すし屋やウナギ屋なども配達を始めたという。なるほど出前とは、店内飲食中心の店が配達することなのだ。
一方、1985年に日本に初上陸したドミノは、アメリカのデリバリーシステムを持ち込んだ。店頭で料理を提供せず、配達のみに特化したのだ。飲食店とは異なる業態であることを明確にすべく、家庭に荷物を運ぶ配送業者を表す「宅配」を使ったのだという。
さて、長らくライバルの後塵を拝していた同社が、一躍業界トップに躍り出た理由は? 「ドミノ・ピザ」と聞いてまず思い浮かぶのは「お持ち帰りなら2枚目無料」というキャンペーンだ。2011年にスタートしたこのサービス、テレビCMを目にするたびに、ナゼそんなことができるの?と思ったが、コレこそが躍進の立役者だったのだ! 今年さらに進化し、「お持ち帰りなら1枚でも半額」を打ち出した同社、果たして採算は合うのだろうか?
注文が入ってから配達終了までに掛かる時間は、ピザの調理に約10分、配達に約20分、トータル30分以内にお届けという時間配分が一般的と言われる。配達に片道20分ということは、往復で40分を要する。仮に時給1200円のアルバイトなら、配達コストは800円という計算だ。掛かるのは人件費だけではない。ガソリン代や車両維持費など、さまざまなプラス要素もある。
それを考えると、ピザの原価率は15~20%程度と低い。例えば2千円のピザの原価が300~400円であれば、1枚タダにしようが何枚でも半額にしようが、十分利益が取れるのだ。
また、配達にはバイトの時給だけでなく時間も費やすから、混雑時に注文が殺到すると、配達要員が皆出払ってしまうので、お届け可能時間が遅くなってしまう。そんなに時間が掛かるならイイや、と注文を取りやめる人もいるだろう。つまり商機を逸することになるのだ。それに比べ、客が受け取りに来てくれれば、5~10分の調理時間のみで済むので、非常に効率が良い。しかも「持ち帰り」の市場機会は宅配の約2.5倍と言われており、それを伸ばさない手はない。
そこで同社は、店舗を裏通りから人通りの多い場所に移転させたり、明るく入りやすい店舗に改装するなど、この業態の従来の店舗とは真逆の方向にシフトし、持ち帰り客の獲得に成功した。実際、同社の2019年四半期売り上げの約45%が持ち帰りだという。
12年に導入されたオープンキッチン「ピザシアター」は、他にも店に良い影響を与えることに。それは何か? ご紹介しきれなかったデリバリーテクノロジーと併せ、次号に続く!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。