【竹内美樹の口福のおすそわけ 357】おでんワールド! その2 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹


竹内氏

 前号の続き。学生時代、友人たちと交わした好きなおでん種についての会話。「やっぱ、ちくわぶでしょ」「何それ?竹輪じゃなくて?」「え~、知らないの? ちくわぶ入ってなかったら、おでんじゃないよ!」。

 そう、わが家のおでんには、ちくわぶが入っていなかったのだ。なじみのない方に説明すると、見た目は竹輪っぽいが、原料は魚のすり身でなく小麦粉で、お麩(ふ)の親戚みたいな物。生産量の90%以上が関東圏で消費されるといい、コンビニのラインアップでも、セブンは関東と山梨県、ローソンは南関東、関東、中部地域のみの販売のようだ。

 その発祥については諸説あるが、白ちくわを模したという説が有力。水産練り製品の本場小田原では代用品が必要なかったため、そこから西へは広まらなかったというのだ。だから、静岡以西のおでんにはほとんど入っていないらしい。

 こんなふうに、地域によって、独特なおでん種や食べ方がある。ご当地グルメが注目されるようになって、ご当地おでんもそのベールを脱いだ。調べてみると、さまざまなおでんの存在にビックリ! 一風変わったモノを、北からご紹介しよう。

 まずは青森風。おでんに、津軽味噌(みそ)で作る「生姜(しょうが)味噌だれ」をつけて食す。薄く大きな四角いさつま揚げ、「大角天」が欠かせない。寒い時期青函連絡船に乗り込む人々に温まってもらおうと、闇市の屋台で味噌におろし生姜を入れて提供したのが始まりだとか。

 続いて金沢風。頂いたお土産のパッケージに、「赤巻」という見慣れない文字が。何だろう?と思ったら、皮状の赤いかまぼこですり身を巻いた、巻き蒲鉾だった。車麩も必須のようで、もう一つ珍しい具が「カニ面(づら)」。北陸で取れる雌のズワイガニ「香箱(こうばこ)ガニ」の甲羅に、内子、外子、身を詰めた物で、漁期のたった2カ月間しか食べられないそうだ。

 お次は静岡風。牛すじから取っただしの黒さに、初めて見る人は驚くそうな。静岡おでんの会による「静岡おでん五ヶ条」は、次の通り。「一、黒はんぺんが入っている。二、黒いスープ。三、串に刺してある。四、青海苔(のり)、だし粉をかける。五、駄菓子屋にもある」。

 そして名古屋風は、愛知県名産八丁味噌の味噌煮込みおでん。大阪風はクジラの舌「さえずり」、くじらの皮「コロ」、牛すじやタコの足を入れるのが特徴だ。ちなみに、大阪ではスジといえば牛すじだが、関東では魚のすじの練り物を指す。

 姫路ではおでんに生姜しょうゆをつけて食す。うどん県香川では、セルフうどんの店の多くにおでんも置かれている。うどんのだしをおでんにも使えるからだ。ここでは白味噌ベースの辛子味噌をつけて食す。

 餃子(ギョーザ)入りさつま揚げ「餃子巻き」はわが家の定番だが、福岡のマストアイテムとは知らなかった。沖縄ではおでんに豚足が入る。紹介しきれないが、紙面の都合でこれぐらいにしておこう。

 大阪ではおでんを「関東煮(かんとだき)」と呼ぶが、その理由は…? おでんワールド、次号は歴史など。お楽しみに♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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