【竹内美樹の口福のおすそわけ159】ドバイの食事情 竹内美樹


 先日、世界有数の観光都市、ドバイを訪れた。ご承知の通り、七つの首長国で構成されるアラブ首長国連邦(UAE)の首長国の一つである。世界一の超高層ビルや世界最大のショッピングモールなど、何かとスケールが大きなドバイ。一体どんな所なんだろう?

 国土面積は、埼玉県とほぼ同じくらい。人口約210万人のうち、UAE国民は約15%程度で、ほとんどが外国人、国教はイスラム教だが非イスラム教徒が多いため、他の首長国に比べてずっと規律が緩いとされている。とはいえ、イスラム教で禁じられているお酒は、提供が許可されているホテルやレストランでしか飲むことができない。

 筆者が訪れたレストランは、いずれも飲酒OKであった。だが、ドバイモールでのショッピング中、ちょっと疲れたからワインでも飲んで一休みしようと思ったら、モール内は全て飲酒NGでちょっぴり残念。ちなみに、このモールの公式サイトには、肩と膝は隠すようにと記載されている。やはり、女性が肌を見せることを良しとしない、イスラム教国ならでは。

 イスラム教で不浄とされる豚肉も、特別な扱いになっていた。スーパーマーケットの中が壁で仕切られ、狭い入り口に「ノン・ムスリム(非イスラム教徒)」の表示が。入ってみると、豚肉やハム・ソーセージ類がずらりと並んでいた。

 在留外国人の半数以上がインド人とあって、インド料理店がとても多い。逆に、一般的な郷土料理であるエミラティ料理の店は、ほとんど見当たらない…というワケで、中東の食文化の影響が色濃いとされる、モロッコ料理を食べに行くことに。小麦粉を粒状にしたクスクスや、とんがり帽子のようなふたが特徴的なタジン鍋の他、鳩のひき肉が入ったモロカン・パイや、串に刺して焼いた肉ケバブなどをいただいた。いずれも、スパイスが多用されている。「スパイス・スーク」と呼ばれるスパイス専門の市場に行ってみると、さまざまな種類のスパイスが山積みになっていた。夏は50度近くにまで気温が上がるため、昔から食品の保存に役立つスパイスが必要不可欠だったのだろう。

 今回の旅のハイライトは、4WDで砂漠を駆け抜ける「デザート・サファリ」。水平線に沈む夕日を眺め、砂漠を疾走した後、バーベキューディナーとベリーダンス観賞というツアーである。人気があるらしく、砂漠の真ん中に忽然(こつぜん)と現れたキャンプには大勢の観光客が。ブッフェスタイルのディナーのお料理は、何と男女別に提供される。ムスリムは、男女の直接の接触を嫌うからだそうだ。

 アルコール禁止だけあって、ラクダのミルクのチョコレートや、ナツメヤシの実デーツのお菓子など、スイーツが充実している。干したデーツはおいしかったけど、ドライフルーツはワインのお供、と思ってしまう筆者。税金が無く、医療費も学費もタダという恵まれたドバイだが、やっぱりいつでもお酒が飲める日本が一番!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

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