前号に続き、新たな年もマメでいられますように、ということで、豆のお話。
豆には未成熟な青いうちに食すもの、完熟してから乾燥させて食すもの、豆粒を食べるものとサヤごと食べるものなどがある。そしてそれは、同じ品種が違う方法で食用になる場合と、品種自体が異なる場合がある。
例えば大豆は前号で述べた通り、同じ品種でも枝豆や乾燥豆などいろんな食材に七変化する。インゲン豆は、サヤごと食す品種と、金時豆や大福豆のように種子のみを食用にする品種がある。なんたって奥が深い豆ワールド。豆とひと言で片付けてしまうには、あまりにも多種多様だ。
おまけに名前もさまざま。サヤごと食べるインゲン豆は、サヤインゲン・どじょういんげんの他、年に3回収穫できることから「三度豆」とも呼ばれる。ちなみに「いんげん」の名の由来は、江戸時代に明の僧隠元禅師が日本にもたらしたからだと言われている。
お料理の彩りなどによく使われる絹さやは、エンドウ豆の若いサヤを食用にするサヤエンドウのこと。もう少し育ち、完熟前にサヤからむいた豆粒を食すのが実エンドウで、通称グリーンピースだ。
完熟後乾燥させたものには、甘納豆やうぐいす餡などに利用される青えんどう、みつ豆や豆大福に入っている赤えんどうがある。ちなみに、エンドウ豆の若芽は豆苗の名で野菜としてお馴染みだが、絹さやと兄弟分とはあまり知られていない。
この仲間で近年人気のスター的存在なのが、スナップエンドウ。サヤエンドウがグリーンピースになるまで育ってしまうと、サヤは硬くて食べられないが、サヤも実も食せるように改良した品種だ。
サヤは肉厚ながら軟らかくジューシー、実もふっくらと甘みが強い。アメリカ生まれで、日本には1970年代に導入された。「スナックエンドウ」と呼ばれることもあるが、83年に農水省が名称を統一したそうだ。
唐突だが、中学校の理科の授業で習った「メンデルの法則」を覚えておられるだろうか? 遺伝子学の礎となったこの法則を発見に導いたのは、エンドウ豆である。
メンデルが、緑の豆と黄色の豆、シワがある豆とそうでない豆などを交配する実験を行い、その結果、この法則を発見したのだ。もしエンドウ豆がなかったら、遺伝子という概念も生まれなかっただろうし、スナップエンドウみたいにおいしい豆を交配による品種改良で作ることもなかっただろう。スゴイぞ、エンドウ豆!
美味と言えば、筆者も大好きなのが蚕豆。サヤの形が蚕に似ているからこの字を当てたとされる。サヤが空に向かって伸びるから「空豆」とも書き、「天豆」とも呼ばれる。また、1粒の大きさから「一寸豆」とも、中国から伝来したので「唐豆」とも言う。かの地では四川料理に欠かせない調味料の一つ、豆板醤の原料にもなっている。豆は海外でも、さまざまな料理に利用されているのだ。というワケで、次回は海外編!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。