タイのプーケットを訪れた。バンコクは行ったことがあるが、コチラは初めて。淡路島より少し小さいこの島、その美しさから「アンダマン海の真珠」と称されるそうだ。
そして隣接地域にある、パンガー湾海洋国立公園観光に出掛けた。映画007のロケ地としても有名な小さな島々や、鍾乳洞の洞窟などがあり、人気の観光スポットだ。ここを目指すボートに乗ると、タイ最大のマングローブの森が見えてきた。
マングローブとは、海水と淡水が混ざり合う汽水域に生える植物の総称である。潮が満ちても流れないよう、幹を支える大きな支柱根を持つ木が多く、その根元にはさまざまな生き物が生息している。
そう、あのマングローブ蟹もあそこに潜んでいるのかもしれない! 景色を観ながらそう考えていたら、やっぱり食べてみたいという気持ちを抑えきれず、プーケットに戻るや否や蟹専門店「ザ・クラブハウス」へ。
いたいた!大きなマングローブ蟹が。タイ語ではプーダム、通称ブラッククラブと呼ぶそうで、その名の通り黒々として大きく、人の指を切断できるほど力のある爪を紐で縛った活け蟹は、2キログラム近くもあった。
店内の生簀を眺めていると、脚がきれいな青色の蟹が。聞けばブルークラブだという。コレもウマそう!とオーダーすることに。結局、ブラッククラブはタイで有名な蟹のカレー炒め「プーパッポンカリー」にしてもらい、スパイシーな味付けのブルークラブが1・5キログラム分入った「ブルークラブバケツ」という同店の名物料理と、ブルークラブの唐揚げなどを注文した。
まずは殻入れ用の大きなバケツと木槌が運ばれて来た。爪が硬いから、これで叩き割って食べるという。ちょっぴり多いかと思われたが、何のなんの。身がギッシリ詰まったブラッククラブは甘みも旨味も強く、カレーソースに負けていない。
バケツにてんこ盛りにされたブルークラブは、アッサリした塩味ながらスパイスが効いていて、いくらでもイケそう。クリスピーな唐揚げもサクサクいただき、硬い爪と格闘しながらも完食。
ブラッククラブは、マッドクラブとも呼ばれ、その正体はトゲノコギリガザミ。ブルークラブは、日本では青ガニとも呼ばれるタイワンガザミのこと。待てよ、コレってどこかで同じ組み合わせを食したような気が…。そう、アレは浜名湖だ! 「舘山寺サゴーロイヤルホテル」でいただいたドウマンガニも、そう言えばトゲノコギリガザミだった。
だが、厳密に言うと、マングローブ蟹はアカテノコギリガザミで、ドウマンガニはアミメノコギリガザミと種が違うらしい。そして浜名湖の「たきや漁」でゲットしたのが青ガニであった。いずれも汽水域に多く生息するため、国も場所もまったく違うのに、偶然こうした組み合わせとなったのだろう。
奥が深い蟹かにワールド。まだ食べていない蟹を見つけたら、スグにでも飛んで行きたい筆者である。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。