二つ目の寄港地は、サンフランシスコ。接岸後スグに車でナパ・ヴァレーを目指したが、大渋滞に巻き込まれ、到着したのは夕方4時半。「オーパス・ワン」のテイスティング・ルームは残念ながらクローズしていたが、道路の向かい側にある「ロバート・モンダヴィ」に行ってみると、閉店時刻の5時ギリギリだったのに歓迎してくれた。
バラの咲き乱れる庭で、「ここならいつまでもごゆっくり」と親切な対応を受け、合計7種類のワインを試飲した後、夕食は「Brix Restaurant and Gardens」という、その名の通り美しい庭もウリのレストランへ。旅先の食事は、当然初めての所が多い。ナパは5回目の訪問だが、この店は初挑戦。いつも選んだお店が大丈夫か?とドキドキだが、ここは雰囲気も良くお料理も美味で、大正解!
中でもイチオシは、「クリスピー・デビルド・エッグ」。そもそもデビルド・エッグとはアメリカの定番料理で、ゆで卵を縦半分に割り、黄身を取り出して調味料などを混ぜ、白身の器に戻したもの。クリスピーって?と思ったら、白身部分がカリッと揚げてあった。その上にブラック・トリュフを混ぜたクリーミーな黄身と、カリフォルニア産キャビアが載っている。食感も味も香りも絶妙なバランスだ。キャビアってカスピ海というイメージだったが、カリフォルニアでも白チョウザメの養殖が行われているそうだ。知らなかった!
翌日は出航前に、フィッシャーマンズ・ワーフにある「CIOPPINO'S」でランチ。魚介類をトマトソースで煮込んだサンフランシスコの郷土料理、チョッピーノを名に冠したベタな観光地的レストランではあるが、地元産ダンジネス・クラブが評判だ。せっかくなので、同店オリジナルのガーリック入りスペシャル調味料でローストした、ホールサイズをオーダー。みじん切りのニンニクが山ほど入ったバターソースの海に、ドドーンと載った殻付きの蟹は迫力満点。
丸のままかと思いきや、甲羅は外れており、身の中央部分が二つに割られ、ガニなどがきれいに掃除されていた。なんて親切! でも、脚をもいだり爪を割ったりする度、バターソースで手はベッチョリ。けれど、それが気にならないくらい、悶絶のおいしさであった。
他に、やっぱり外せないのがブレッド・ボウル入りニュー・イングランド・クラムチャウダー。スープの入ったサワードウ・ブレッドは、酸味があってモチモチした食感。空気中に存在する菌を利用して作る天然酵母は、その土地の風土気候によって異なるが、ゴールドラッシュの頃1894年にフランスから移民したパン職人がサンフランシスコ特有の天然酵母を生み出し、それ以来サンフランシスコ名物となった。
とても満足なランチとなった。…が、後で肝心のチョッピーノをオーダーし忘れたことに気付き、チョッピリガッカリ。って、シャレじゃないけど。次号も、お楽しみに!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。