米国ロサンゼルス郡サンタモニカで、R+Dキッチンというレストランに行った。海の見える場所でシーフードというイメージの土地柄なのに、ダウンタウンにある同店を訪れたのは、看板料理のクリスピー・チキン・サンドをどうしても食べてみたかったから。人気店だが予約を受けていないため並ぶ覚悟で行ってみると、カウンターならOKと言われ助かったが、その後、入り口付近は大混雑。何とその中には、「シュワちゃん」ことアーノルド・シュワルツェネッガーの姿も! きっとおいしい店に違いないと、すっかりハイテンションに。
チキン・サンドは確かに驚くほどクリスピーで、野菜タップリ、自家製パンもふわっふわ。なるほど、超人気メニューなのだとナットク。だがそれよりも筆者が感動した料理は、バーベキュー・ビーフ・リブだ。
リブとは英語で肋骨・あばら骨を指す。つまりは骨付きあばら肉ということ。肩ロースとサーロインに挟まれた、リブロースという部位とは別物である。専門店がチェーン展開しているため、日本では牛より豚の方がポピュラーだ。現在世界33カ国約200店を展開するトニーローマが1979年日本初上陸、それに先んじてホテルニューオータニ内トレーダーヴィックスが1974年に出店、スペアリブの普及に一役買った。
豚肉の場合、「スペアリブ」と「ベイビー・バックリブ」という呼称がある。前者はお腹に近いバラ側の部位、後者は背中に近いロース側の部位で、スペアリブより小さいからベイビーと呼ばれるそうだ。
ちなみに、沖縄のソーキそばの「ソーキ」とは、スペアリブのこと。硬い骨付きの物を本ソーキ、軟骨だけの物を軟骨ソーキと呼ぶ。中国では「排骨(パーコー)」と呼ばれ、揚げて麺に載せた排骨麺や、飲茶メニューの豆鼓蒸しなどがある。骨付きだと骨から出るダシで旨味が出るし、なんたって骨ぎわの肉がウマイ。
話を戻そう。R+Dキッチンのビーフ・リブは、フォークで触れば骨からホロリと肉が外れるぐらい、ナイフのいらない軟らかさ。添えられたマスタードベースのカロライナ・バーベキュー・ソースも絶品、文句なしの一皿であった。シュワちゃんも並ぶワケだ。
牛豚を問わず、骨付きあばら肉をメニューで発見すると注文せずにはいられない筆者、スペアリブには思い入れがある。何を隠そう、我が家のお袋の味の一つなのだ。帰国子女の母がいたアメリカでは、各家庭の味付けがあったという。
母のレシピはアバウトで毎回味が違うが、玉葱とレモンの輪切りを入れたバーベキューソースで肉を和え、オーブンで焼く方法。焦げ目のついたレモンの酸味とほろ苦さが甘めのソースを引き立て、我が母ながら天晴れな美味。
手の汚れも気にせず、骨を掴んでワシワシといただくのが、スペアリブの醍醐味。あぁ、書いてたら食べたくなっちゃった! 次は筆者自身の、圧力鍋で煮るレシピで作るとするか。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
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