フィンランド・ヘルシンキから、スウェーデン・ストックホルムへは、飛行機なら約1時間で移動できるが、今回はバルト海クルーズを楽しむことにした。夕方5時に出港して翌朝9時半着、時差があるので17時間半の船旅だ。
ヘルシンキのオリンピア・ターミナルで、バルト海沿岸の主要都市間を運航する定期航路船「タリンクシリヤライン」のシリヤ・シンフォニー号に乗船。出迎えてくれたのは、オフィシャルキャラクターのムーミンとミイだった。
船内に足を踏み入れると、プロムナードと呼ばれる開放感のある吹き抜けがあり、両サイドには飲食店や免税店が並んでいる。車も運べるフェリーだが、雰囲気は豪華客船そのもの。最上階のデッキに出ると、ちょうど世界遺産「スオメンリンナの要塞」が見えた。船は美しいアーキペラゴ(多島海)を進んで行く。
船内にはいくつかレストランがあるが、最も評判が高いブッフェディナー、スウェーデンで言う「スモーガスボード」を予約しておいた。スモーガスとはバターを塗ったパン、ボードは食卓を意味するそうで、日本のバイキング料理の原型とされている。
広い店内にズラリと並んだ料理は区分けされ、それぞれに看板が下がっていた。「ベジタブル・マーケット」「フィッシュ・マーケット」「ミート・マーケット」「温かい料理」「デザート」の他、「ストリート・フード」のコーナーにはタイの焼きそばパッタイやメキシコのトルティーヤにサルサソース、インドカレーとナン、ベトナムの汁麺フォーなど各国の料理が。
一番印象に残ったのは、北欧の人々が大好きなニシンの味付けが7種類もあったこと。オニオンやマスタード、ホースラディッシュに、レッドカラントの実が入った物までさまざまだ。
だが残念なことに、某国のツアー客が、サーモンや海老など人気メニューの前に大挙して押し寄せて来て、近づけそうもない。筆者は、この時点で戦意喪失。期待からは程遠い夕食となってしまった。
翌朝は昨夜のブッフェ会場ではなく、イタリアンレストランでのスペシャル朝食付きだったので、いざリベンジ。同じくブッフェだが、ゆっくりできた。
北欧の朝食につきものなのが、カレリア・パイ。ライ麦のパイ皮に、ライスプディングやマッシュポテトを詰めて焼いた物だ。これに刻んだゆで卵とバターを混ぜた、エッグバターなるものを付けて食べる。もう一つは、ムスタマッカラと呼ばれる黒ソーセージ。フィンランドのタンペレという、ムーミン博物館のある街の名物で、豚の血や挽肉、大麦などで作るそうだ。見た目は悪いが、フランス版ブラッド・ソーセージ「ブーダン・ノワール」好きな筆者は好みの味。
かくして、バルト海クルーズはあっと言う間に終了。思えばいろいろな経験をして、たくさんのモノを食べた北欧3カ国の旅。次回はオーロラを観に行きたいと、密かに狙う筆者である。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
カレリア・パイ
黒いソーセージ
船内ブッフェ
船内ブッフェ