【竹内美樹の口福のおすそわけ204】「食べ物の島」アイルランド 竹内美樹


 先日、アイルランド政府食糧庁主催、駐日アイルランド大使館後援の「フレーバー・オブ・アイルランド・ネットワーキング・レセプション」というイベントに参加させていただいた。農業食糧漁業大臣マイケル・クリード氏の来日に伴って開催されたもので、冒頭では同氏やタラ・マッカーシー食糧庁長官によるスピーチも拝聴することができ、非常に有意義だった。

 立食パーティー形式で試食や試飲を楽しみながら、アイルランド産の牛肉、豚肉、シーフード、乳製品など食材や、ビールやアイリッシュ・ウイスキーなど輸出品を味わってもらい、日本人にその品質の高さをアピールし、魅力を理解してもらおうという趣旨だ。

 ところで、アイルランドって、どんな国だっけ? という方のために、ここでチョットおさらい。北大西洋に浮かぶ、北海道とほぼ同じ面積のアイルランド島のうち、南側約6分の5を占める国。北側は英国領北アイルランドである。日本とアイルランドは今年、外交関係樹立60周年を迎えたが、海に囲まれた島国であることや、古くから継承された文化を持っていること、さらには平和を希求(ききゅう)する中立政策を取っていることなど共通点も多い。

 英国のEU離脱が正式決定した今、アイルランドはEU加盟国唯一の英語圏となるため、投資先としても人気を集めているそうだ。

 人口約500万人で2500万人分の食糧を生産しているという同国。2050年までに24億人増加すると言われる世界の人口を養うには、今の倍の食糧が必要だが、そんな将来を見据えてサスティナブル(持続可能)な食糧生産体制を整えているそうだ。輸出品の約90%以上がさまざまな審査基準にのっとったオーガニック商品というから驚きだ。大臣は自国を「180カ国以上に食糧を輸出する『食べ物の島』」と表現されたが、二酸化炭素対策やリサイクルなど、地球環境を守るあらゆることに取り組む食糧先進国でもあるのだ。

 難しいことはさておき、ホテルオークラ東京で開催された同イベントに並んだお料理は、いずれもお世辞抜きで美味だった。サーモンやサバのスモークなどの海産物、豚ロース肉のローストやビーフストロガノフに、牛フィレ肉のソテー、ローストビーフ、日本とのコラボを意識した牛タンの酒粕煮込みなど。

 やっぱり、アイリッシュビーフがイチオシなんだろうと思う。なんたって、牛肉自給率がEUダントツ第1位の588%だそうで、その輸出額は世界第5位という、有数の牛肉輸出国なのだ。ほかにも、バター輸出額世界第2位、チーズ輸出額世界第8位だとか。そういえば、この時もチーズの品ぞろえが豊富であった。

 シメにアイリッシュ・ウイスキーの飲み比べをしながら、日本も見習わなくちゃと思った。先々を想定して農産物を作ったり水産物を獲ったりしなければ、未来の食糧は枯渇してしまう。楽しくかつ考えさせられたこのイベントに、感謝した筆者であった。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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