その1で、過去の月間使用量から「ムダ」を見つける方法を述べましたが、今回は1日当たりの給水使用量から「ムダ」を見つける方法について述べます。
まず比較的予約の多い月を選んで、毎日午前11時から1時間おきに水道メータ(量水器)と電気メータ(電力計)の計測値を記録して、最も利用客数が多い日と少ない日の時刻ごとの使用量を折れ線グラフで表示します。そして日報から各時間帯での水や電気が何のために使われたのか調べ、水や電気の使い方を再検討して「ムダ」を見つけます。
当協会の調査では、給水の「ムダ」使いはほとんど温泉大浴場や厨房で発生しているので、大浴場や厨房での水の使い方を調べてみてください。
下図(図2)は青森県のG温泉旅館の時刻別給水使用量ですが、浴場の清掃準備時間の10時から3時間に多量の水道水を使用しており、浴場と浴槽の洗浄のほか温泉浴槽の湯張りが原因でした。多くの旅館が団体旅行向けに温泉の流量に関係なく大きな浴槽を設置した結果、短時間で浴槽に湯を張るためには、給湯を混ぜる必要があり多量の浴場を使わざるを得なくなり、お客さまが求める温泉としての価値を下げ、加熱燃料を使ってCO2排出量を増やしているのです。
この旅館の場合には、温泉貯留槽を新設して深夜の浴場閉鎖時には浴槽に送る温泉を止めて、温泉を貯留し加熱して温泉のみで浴槽の湯張りを行うように改善して、温泉浴としての価値を上げ、水道使用量とボイラ用重油の使用量を削減しました。
なお、一般の給湯設備には給湯使用量を測る計測器が設置されてないため、使用量を知ることができませんが、調査した3軒の温泉旅館で時刻別の給湯使用量を超音波流量計で計測した結果、3軒とも目的が分からない給湯が常時流れていることが分かりました。給湯配管からの湯の漏れは湯気が出るので発見しやすいのですが、3軒とも漏水箇所の発見はできませんでした。おそらく、浴槽周りなどの土中埋設配管あるいは浴室内の床や壁の埋設配管の破損が原因と考えられますが、現在も原因不明のまま放置されています。
このような給湯の「ムダ」は、水や加熱エネルギーの「ムダ」につながるので、給湯使用量を計測するメータを設置して、給湯の「ムダ」なくすことは、CO2排出量の削減に役立つので、ぜひ給湯用量水器の設置を検討してください。
なおデータを精査すると、不特定の人が記録したデータは誤記が生じやすく、データの分析に支障が出ることが多いので、上記作業は専任担当者を指名して実施してください。
(エコ・小委員会 ユニ設備設計会長・小川正晃)