【観光の学校特集】東洋大学


越智教授

多分野から観光にアプローチする教育

 東洋大学の観光学科は、第1回目の東京五輪が開催された1964年の前年、日本で初めて高等教育機関(当時は短期大学部)として文部科学省に認可された観光系の学科。日本で最も長い歴史を持ち、観光分野の教育研究に多くの実績がある。2001年に4年制の「国際観光学科」へと発展、2017年には「国際観光学部」としてさらに大きく飛躍し、2018年には大学院に国際観光学研究科国際観光学専攻(博士前期課程・博士後期課程)を開設した。

 東洋大学が観光学科を設立した1963年は、観光基本法が制定され、基本的な観光産業の基盤が日本に整った年だ。その後、日本が人口減少社会に入ることを鑑み、政府は観光基本法を全面的に改正し、2007年に観光立国推進基本法を施行した。
 
 これにより日本は、インバウンド振興をはじめとして、観光を基幹産業として成長させていくことに舵を切った。東洋大学国際観光学部は、この国の基幹産業を観光政策やツーリズム、ホスピタリティなど、さまざまな面から支える人材を育成することをミッションとしている。

東洋大学白山キャンパス8号館

 カリキュラムでは、1年次に観光学に関する基礎的な理論を身に付けた上で、2年次からより専門的な二つの学問領域(観光政策・ツーリズム系領域、ホスピタリティ系領域)に分かれる。

 観光政策・ツーリズム系領域では、国内・海外の両方の視点に立ち、観光に関連する産業や行政について学ぶ。

 観光産業は、近年急速に変化。ホテルや航空会社、旅行会社といったいわゆる観光ビジネスだけではなく、観光立国を目指す政府や自治体などの行政、需要が高まっているイベント・コンベンション業界、インバウンド消費に代表される流通業界やメーカー、予約や情報提供に必要なICT関連、地域活性化に関連する金融や不動産業界など、幅広い分野で観光の知識とスキルが求められている。同領域では、それらに共通して求められる「企画・立案、変革する力」を身に付ける。社会を見る力、それを分析し、解決する力を養い、論理的・科学的な思考とともに、国内外の文化や自然などの教養も学んでいる。

 同領域で学んだ学生の進路としては、旅行会社(企画、コンサルティングセールス)、鉄道・航空会社(企画、セールス)、イベント運営会社、空港、イベント施設、公務員、銀行、保険、DMOなどを想定している。
 ホスピタリティ系領域では、ホスピタリティ産業を中心としたさまざまな観光事業の現状を把握し、そこから理論を身に付けていくことを目指す。

 具体的には、ホテル、料飲サービス(飲食業)、ブライダル、航空会社のキャビンアテンダントやグランドスタッフ、エンターテインメント、小売業など各事業の科目を設置し、顧客との接点が生じるビジネスを学ぶ。同時に経営戦略論や組織論、マーケティング論、会計論、ファイナンス論など、産業を横断するマネジメント科目も学習。実地研修、演習、インターンシップなどの実習も幅広く行い、実際に体験して深く理解することにも力を入れている。

越智教授

 同学部の越智良典教授(元日本旅行業協会事務局長)に話を聞いた。

 ――コロナ禍が続いており、観光業界はまだ先が見えない。

 「新型コロナウイルス感染症は、観光産業にもさまざまな影響をもたらした。しかしながら、短期間で感染対策のガイドラインを周知徹底する体制構築や、これまで『安近短』の傾向が強かった国内旅行にテーマ型、滞在型、体験型を定着させ、国内の魅力を再発見させるアフターコロナにもつながる価値創造を行うなど、多くの柔軟な変革により出口の光は見えてきている」

 「東洋大学の国際観光学部は『変化に挑戦できる人材の育成』を掲げ、学生は問題解決力、たくましさ、柔軟性を身に付けている。コロナによる危機を乗り越え、観光産業を地域創生の主役にしたい」

 ――コロナ禍での学生の就職に変化はあったか。

 「国際観光学部は伝統的に観光産業への就職に強いと言われており、私自身も前職の頃からそういった印象を持っていた。学部に改組してからの1期生が今年3月に卒業。約9割の学生が就職し、コロナ禍にありながら、多くが航空、鉄道、宿泊、旅行といった観光産業に関連する企業・団体に進み、そのうちの5割弱がホテル・旅館に就職した。観光行政に携わる公務員や保険、クレジット、ブライダルといった関連産業にも就職している」

 ――東洋大の観光には幅広い専門分野を持つ教員がそろっている。

 「IRの佐々木一彰教授、観光SDGsの古屋秀樹教授、サスティナブルツーリズムの藤稿亜矢子教授、温泉・宿泊事業の内田彩准教授、エンターテインメントビジネスの八木京子講師など、多彩な専門領域を持つ教員がいる。本学で学んだ学生は裾野の広い観光産業界の各方面で、幅広い知識と経験を生かして活躍している」

 

東洋大学 国際観光学部 国際観光学科


関連キーワード
 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒