広島県福山市の鞆の浦でホテル鷗風亭などの宿泊施設を運営する鞆スコレグループは、インバウンドの誘客強化に乗り出している。鞆の浦で展開する「汀邸遠音近音」(みぎわていをちこち)と分散型の古民家ホテル「潮待ちホテル」を「Ochikochi & Villas」として、日本旅館を世界に発信するコンソーシアム「ザ・リョカンコレクション」に登録するなど、地域の魅力を発信しながら、外国人観光客を呼び込む。
◆福山・鞆の浦
瀬戸内海のほぼ中央に位置する鞆の浦は、古くから風待ち、潮待ちで栄えた港町。常夜燈、波止場、船番所跡などが残り、古い商家や町家が立つエリアは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。また、宮﨑駿監督のアニメ映画「崖の上のポニョ」のモデル地とされ、作品には鞆の浦を思わせる景色が多数登場する。
江戸期に朝鮮通信使の宿舎として利用された対潮楼、シーボルトの旅行記に登場する医王寺、坂本龍馬率いる海援隊のいろは丸事件の談判所跡など、歴史的なスポットも多く、鞆の浦は、日本遺産に「瀬戸の夕凪が包む 国内随一の近世港町」として登録されている。
鞆の浦(写真提供:広島県観光連盟)
◆遠音近音/潮待ちホテル
観光資源が豊富な鞆の浦だが、外国人観光客はまだ少ない。鞆スコレ・コーポレーションの村上正高会長は「外国人を引きつける魅力は多いと思うが、鞆の浦という地域が外国人に認知されていない。今は国内のお客さまでにぎわっているが、先を考えると、インバウンドの強化は必要」と話す。
ザ・リョカンコレクションに加盟した汀邸遠音近音は、17室全てがオーシャンビューの温泉露天風呂付き。瀬戸内の旬の食材を使った料理が好評で、鯛(たい)釜飯やオコゼ料理が自慢の逸品だ。
潮待ちホテルは、「暮らすように泊まり、まちの物語を楽しむ旅を」をテーマに、重伝建地区の商家や町家4棟をリノベーションした施設。かつて和船の漕具造りを生業とした商家だった「櫓屋」(4室)、隣り合う町家を改装した「櫂」(3室)、大正期建築の町家だった「オーベルジュ櫻や」(2室)、江戸中期の平屋建築を改装した一棟貸しの「別邸試楽亭」で構成される。
分散型古民家ホテルの潮待ちホテル「櫂」