【観光学へのナビゲーター 18】持続可能な観光地域は人づくりと地域づくり 日本国際観光学会・東北トラベルコンシェルジュ1期生/ 翻訳・スポット秘書サービス CTB 代表  小野寺恭子


小野寺恭子氏

 通訳ガイド国家資格制度については、無資格でも有料の通訳案内をできるようにする改正通訳案内士法が 2018 年 1 月 4 日から施行され、「通訳案内士」の有資格者の業務独占の規制を撤廃した形となった。訪日外国人旅行者の更なる受入環境の整備を図る上で、各地域での通訳ガイドを増やす必要があることが背景の一つにある。通訳ガイド制度の充実・強化に向けて観光庁は 2019 年度予算で5500 万円を計上している。

 地方創生という追い風の中、この一連の動きにより地域密着で活動する地方ガイドには選択肢が増えたことになる。東京依存から離れ、それぞれの地域でどういった目に見えない価値を見出すかということに多くの地方自治体や企業が取り組んでおり、さまざまな枠組みの中で新しく誕生するガイドも動きはじめている。

 東北は全国の中でも訪日外国人の訪問率が低く、インバウンド誘客が課題となっているが、面白い事例を紹介したい。

 (株)東北インアウトバウンド仙台・松島では様々な施策を実施している。宮城県塩竈市だけで使えるキャッシュレス決済サービスの地域通貨・竃コインの実証実験で利便性を高め、わかりやすく地域内消費を促進することに加え、新しいガイド像である東北トラベルコンシェルジュ(TTC)の育成を行っている。

 東北には観光地に住んでいるという感覚を持っている人は少なく、「暮らしぶり」そのもの、言い換えれば人が観光地にとってのいちばんのキラーコンテンツであるという位置づけであるため知識のほかに、「編集力」・「物語力」を持つ人材の養成が必要不可欠なのである。

 多様性とはどこからくるかといえば、知らないことに出会い、既知の知識や経験と比較できる状態となった後にその違いを違いとして認識することから始まる。それを知り、楽しむことが旅行の醍醐味ではなかろうか。これからの地域観光において必要とされるのは、それをきちんと認識した上で旅行者に “My recommendation” を自分なりの言葉でダイレクトに旅行者に発信できる、つまり無形のものを有形化してそこに価値をつけるという広い意味での知的財産の活用視点が求められている。

 地域づくりと人づくりを地方にとっての価値としてそれらをパラレルに強化していくことは、あるものを生かした持続的に発展可能な未来の観光地域づくりにつながる取り組みであると言えるだろう。


小野寺恭子氏

 
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