【観光学へのナビゲーター 42】ホスピタリティ産業の「スマート化」に向けて 東洋大学国際観光学部 准教授 徳江順一郎


徳江氏

 2020年の晩夏頃から、日本能率協会が主催する「宿泊業のスマート化」研究会においてファシリテータを務めさせていただいた。複数のホテル運営・経営会社の方々と、ホテルに機器類を納入するメーカーの方々とが一堂に会して、将来のホテル像を描いていこうというものであった。ありがたいことに、筆者の所属先である東洋大学国際観光学部の学生たちも参加させていただき、講義を通じて検討した結果を発表する機会にも恵まれた。ご参加いただいた皆様方からは、「所詮、学生の意見」などといった見方ではなく、真摯に学生たちの意見も取り上げていただき、検討会におけるアクセントになるとともに、本人たちにとっても貴重な体験となった。その結果は、2021年2月に開催された「国際ホテル・レストランショー」での展示に結実し、読者諸氏もご見学になった方もいらっしゃるかもしれない。

 さて、この研究会では時節柄、やはり「非接触」、「顔認証」、「ロボットの活用」といったテーマがメインに据えられた。これらは、「コロナ・ショック」の前までは、ごく一部の施設での導入例がある程度であった。しかし、2020年の大きな課題が「ディスタンス」だったこともあり、いずれも大きくクローズアップされることになったのは周知のとおりである。多くの施設において急速に導入されるとともに、驚くべき速さで技術開発も進められ、次々と使いやすいシステムが開発されていった。その意味では、研究会の検討でも、キャッチアップしていくのが大変だったことが思い起こされる。

 一方で、新しい技術の導入によって、人的サービス面がないがしろにされるのではないかとの懸念もつきまとった。特に、高価格帯の施設においては、お客様と接する数少ない機会を手放すようなイメージにもなろう。

 しかし、「スマート化」の進展によって省力化が進めば、その分の人的資源を、さらなるサービスアップにつなげていくことも可能である。また、従前では考えられなかったサービス提供の可能性も拡がることになる。

 カードキーの導入やモーニングコールの自動化、果てはPMSの導入に際して、大きな抵抗があったことをご存知の方も多いことだろう。しかし、こうした「かつての新技術」は、今では当たり前のものとなっている。「今日の最新」は「明日のスタンダード」であるかもしれないということだ。

 新型コロナウィルスの蔓延は、確かに業界に甚大な影響を及ぼした。しかし、少し視点を変えれば、「明日のスタンダード」を一気に試行するチャンスにもなっているということである。事実、そのようにとらえて矢継ぎ早に改革を進めている施設もあるし、学生たちの提言も、そういったものが多かった。

 こうした「変革」を実現するためには、1対多で指揮・命令する中央集権型組織では困難で、いわゆる自律分散型の組織によって、斬新な意見や試みを積極的に取り入れていく必要がある。「ポスト・コロナ」では、今ではまったく想像もできないような宿泊施設が誕生していることだろう。この事態を、「変革の好機」ととらえられるかどうかが、生き残りの鍵になる。

 
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