【観光庁「宿泊施設地域連携推進事業」モデル事業紹介】湯田中温泉観光協会(長野県)


ユニバーサルフード試食商談会を2月に開催した

旅館の食事需要喚起 食の多様化は地域で

 長野県山ノ内町の湯田中温泉観光協会は、インバウンドに対応した食の多様化に向け、旅館6軒が中心となって地域と連携した事業を推進している。外国人宿泊客の急増で地域の飲食店で食事をとる泊食分離が進む中、旅館での食事を選択してもらう需要の喚起策を模索した。また、ベジタリアンなどの外国人の多様な食のニーズに対応した「ユニバーサルフード」の受け入れ態勢の整備に地域一体で取り組んだ。

 地獄谷野猿公苑のスノーモンキーの人気などで外国人旅行者が急増。旅館は素泊まり、朝食のみのプランにも対応し、泊食分離は進んだが、夕食などの食事需要の一部は町内の飲食店に流出した。旅館の集客が地域経済の活性化に貢献する一方で、旅館経営の観点では食事を分離した分だけ売り上げに影響が出てしまう。

 事業の推進役、あぶらや燈千の湯本孝之社長は「和食文化や会席料理といった旅館ならではの付加価値を生かした食事の差別化で需要創出を目指したい」として、連泊などの際に宿泊している旅館とは別の旅館で夕食をとる事前予約の仕組みなど、旅館相互の協力態勢を構築した。また、旅館が夕食や朝食をレストランのように一般客に開放することで新たな食事需要を取り込もうと、旅行サイトへの情報発信も始めた。

 もう一つの課題に外国人の食のニーズを考える上で、ベジタリアン、ヴィーガン(動物性食品をとらない)、グルテンフリー(小麦粉などグルテンの食品をとらない)、イスラム教徒のハラールなどへの対応がある。この課題には参画旅館だけでなく、町全体でユニバーサルフードの提供を目指す必要性で一致した。

 19年2月に山ノ内町ユニバーサルフード試食商談会を地元で開催した。町内の宿泊施設、飲食店を中心に長野県内から37社が参加し、ヴィーガン、グルテンフリーなどの食材を扱う食品会社など20社が出展した。共同購買を視野に、食材の試食、商談を行ったほか、食の多様化やハラール対応をテーマにした講演会もあり、地域の関心は高まりつつある。

 地域を挙げてユニバーサルフードの対応を推進し、湯田中温泉などが食の多様性を重視した観光地、温泉地であることをPRする。訪日外国人旅行者が利用するポータルサイトにウェブ広告を掲載する予定だ。

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