【観光復活の論点】宿泊業の未来像 日本旅館協会 未来ビジョン委員会 委員長 相原昌一郎氏


相原氏

創業の理念に立ち返るー その体現が価値、働きがい

 ――日本旅館協会には、2022年6月の新体制発足に伴い、未来ビジョン委員会が設置された。その役割は。

 未来ビジョン委員会について、大西雅之会長からは「経営者にとっても、社員にとっても、そして若い人にとっても、働きがいのある宿泊業のビジョンを描け」という指示を受けた。働きがいを考える上で宿泊業の価値とは何か、抱えている問題は何か、課題を洗い出しながら、コロナ禍を乗り切り、どうすれば求めているところにたどり着けるかを検討する。会員にアンケートをとったり、有識者に意見を聞いたり、モデル事業を実施したりしながら、宿泊業における持続可能な経営の指針となるようなものをまとめたい。

 ――宿泊業の働きがいや価値を考える意義とは。

 観光は日本をけん引する基幹産業として期待されているが、コロナ禍で離職者が増え、人手不足もさらに深刻化している。宿泊業の働きがい、価値を問い直し、宿泊業はこうあろうとしているというビジョンを協会から示す。宿泊業の価値とは何か。宿泊業の分野には参入も多く、新たな業態・サービスが絶えず登場している。その結果、お客さまが旅館、ホテルに求めるものが変化し、“おもてなし”として期待されるものも多様化してきている。私たちが本来提供しようとしている価値とはかけ離れ、その乖離(かいり)が不満やクレームにつながる。スタッフも働きがいを見失い、疲弊してしまうような状況が起きてはいないか。ニーズ、トレンドに対応して変化することは必要だが、それだけだと、旅館の文化も、ホテルのスタイルもなくなってしまうかもしれない。外からの圧力で変わるのではなく、やはり私たちが内からあるべき姿を示すべきではないか。

 ――宿泊業の価値といっても、規模や業態が多様で、統一的な発信ができるのか。

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