沖縄宿泊業界の現状と課題
外国人就労者在留資格の緩和を
自民党・二階幹事長に要望
沖縄県の2017年度の観光入込客数は前年度比9.2%増の957万9900人となり、過去最高を更新した。順風な状況だが、宿泊事業者には危機感もある。沖縄観光コンベンションビューロー会長で、かりゆしグループオーナーの平良朝敬氏に沖縄宿泊業界の現状と課題を聞いた。
――沖縄の観光客数は5年連続で過去最高を更新し、17年度にはハワイの観光客数を上回った。非常に好調だ。
「沖縄は今年度、観光客数1千万人を目標としている。今後、国内観光客の伸び率は約2%という予測があるなかで、増加している訪日外国人客とクルーズ旅行客をさらに伸ばしていく戦略だ」
「ハワイが宿泊日数8.9日、消費単価24万円なのに対して、沖縄は3.8日、7万5千円と3分の1程度。数は抜いたが、中身はまったく及ばない。泊数を伸ばすと同時に消費単価を上げることがこれから重要だ」
――宿泊事業者にとっての課題は。
「一つには、観光地形成促進地域での宿泊施設投資減税を実現してほしい。国税の投資税額控除対象施設は『スポーツ・レクリエーション施設』『教養文化施設』『休暇施設』『集会施設』で、宿泊施設は対象外。宿泊施設を対象施設とし、観光先進地形成のために、内外からの投資を促して、宿泊施設を政策的に増やす必要がある。現実に即した税に変えるべきだ」
「不動産取得税の適用緩和として、土地取得から1年以内の建物建設が適用条件となっているが、規模の大きい施設の場合、土地取得後に実施設計を行い、工事着手に1年以上を要すため、2年以内の着工に緩和する必要がある」
――人手不足の状況が続いていて、なかでも宿泊業界は深刻だ。
「人手不足によってかなり経済損失が起きている。人手を補うため、外国人労働者を入れなければならないが、現在の制度は限られた場所にしか配置できない。外国人就労者在留資格は『技術・人文知識・国際業務』に該当する高度語学人材としての外国人就労が認められているが、ホテルでは通訳業務を主とする制限内容だ。これをレストラン、客室清掃業務などマルチタスクに従事できる雇用形態にするべきだ。マルチタスク対応の人材でなければ、ホテルの生産性は上がらない」
「調理業務に関しても『経験10年を有す』や『該当する国の料理に限る』などの規制を緩和し、優秀な料理人を海外から雇用し、グローバルな食に対応する必要がある」
――空の玄関口である空港の整備も重要だ。
「那覇空港でのLCC専用ターミナルの整備、拡充が必要だ。これから世界で航空機が3万9千機ぐらい増え、そのうちの70%がアジアに来る。そして、LCCがアジア全体の運航の75%にまで拡大するという予測がある。LCCを受け入れる状況を整備しないと、日本は世界の中で乗り遅れる。成長著しいアジアの観光需要を取り込むためには、地理的優位性を持つ那覇空港を拠点に、アジアから沖縄経由国内、国内から沖縄経由アジアへとその総需要を確保することが重要だ」
「現在のLCCターミナルは制限エリア内にあり、拠点となる国内ターミナルとの連携が悪く、改善が必要だ。また、混雑時間帯のスロット(発着枠)を拡大しなければならない。新規路線開設に対するインセンティブの実施や時間帯別着陸料による空港使用料の低減も検討してほしい」
――そうした課題の解決に向けて、どういう取り組みを進めている。
「宿泊施設投資減税は、県も財務省に要望をしている。外国人労働者資格は、来年4月からある程度緩和されるが、まだ不十分だ。現場に即した資格制度を構築してほしいと、もっと声を上げていきたい。LCC専用ターミナルについては『ぜひ造ってほしい』とお願いするしかない」
「自由民主党・二階俊博幹事長と沖縄の観光・旅行団体との意見交換会が9月10日に開催された。この場で二階幹事長にも要望をした」
――二階幹事長に要望を行った手応えは。
「観光産業の発展は国の成長戦略。沖縄のみならず国全体の問題と受け止めていただいた。さっそく、関係する観光庁や法務省、厚生労働省の各責任者を呼んで、ヒアリングを実施したと聞いている。非常に素早く動いていただいて、沖縄の観光関係者としてもたいへんありがたい」
平良朝敬氏
【板津昌義】