【観光業界人インタビュー】エクスペディアホールディングス社長 マイケル・ダイクス氏


エクスペディアホールディングス社長 マイケル・ダイクス氏

エクスペディアの事業展開

契約旅館・ホテルが倍増 訪日客誘致で九州を支援

 米エクスペディアグループの日本法人の社長、マイケル・ダイクス氏に同グループの規模や日本での事業展開について聞いた。

──エクスペディアやブッキング・ドットコムなどのグローバルOTA(オンライン・トラベル・エージェント)の事業規模は日本のOTAとは桁違いに大きい。

 「エクスペディアグループは、世界75カ国以上で、35言語による200以上の旅行サイトを展開している。15年度の売り上げ(予約流通総額)は600億米ドル。16年の伸び率も堅調で、16年4〜6月期の業績は売り上げが前年同期比25%増の188億米ドル、収益が同33%増の21億米ドル。契約宿泊施設数は同20%増の30万7千軒だ」

──日本市場の位置づけは。

 「インバウンド需要が旺盛なこともあり、非常に伸びており、最重要市場の一つだ。エクスペディアは06年11月、東京に進出。10年10月大阪、15年9月福岡、同10月名古屋、16年2月沖縄に支店を開いた。この9月には札幌にも開く」

──宿泊施設からOTAに供給される客室数には限界がある。楽天トラベル、じゃらんnet、ブッキング・ドットコムなどとの間で仕入れ競争が激化しているのではないか。

 「宿泊施設様と良好な関係を保つことは極めて重要だ。当社ではマーケット・マネージャーがその職責を担っている。世界中の旅行者からの宿泊需要にこたえるためには、契約施設数を増やしていかなければならない。15年にはマーケット・マネージャーの数を2倍に増やした。また16年1月から現在までで、さらに40%増員した。各地域と縁のある人材を積極的に採用している」

──ダイクス社長の着任は、昨年の10月。契約施設総数はそれからどの程度増えているのか。

 「約2倍に増えている」

──エクスぺディア・グループ内には、宿泊予約専門サイトのホテルズ・ドットコムもある。日本法人オフィスも同じ場所に同居している。

 「販売するサイトのブランドは違うが、仕入れの仕組みは共有している。私は、エクスペディアホールディングスの代表取締役であると同時にエクスペディアグループの一部門である『ロッジング・パートナー・サービス(LPS)』の日本・ミクロネシア地区統括本部長でもある。ビジネスパートナーであるホテルや旅館などの宿泊施設と良好な関係を築き、エクスペディア・グループが展開する200を超える旅行サイトを通じて、何百万人にもおよぶ世界中の旅行者と結びつける役割を担わせていただいている」

──どの地域からの訪日客が伸びているのか。

 「16年上半期のデータで、成長率の高い順に申し上げると、韓国が前年同期比80%増、台湾が同55%増、マレーシア同50%増、香港も同50%増、英国同45%増、シンガポール同45%増、中国同40%増、米国も同40%増だった」

──訪日客の宿泊ボリュームが大きい場所は。

 「同データでは、東京、大阪、沖縄、京都、福岡、札幌の順だった」

──では、訪日客の宿泊日数の成長率が高い都市、観光はどこか。

 「同データをみると、訪日客の旅行範囲はゴールデンルート以外にどんどん拡大している。伸び率の高い順に、金沢が前年同期比143%増、広島同100%増、舞浜・千葉同96%増、名古屋同90%増、札幌同80%増、横浜同72%増、大阪同60%増、ニセコ同58%増といった具合だ」

──九州の復興支援にも取り組んでいる。

 「4月に発生した熊本地震で被害を受けた九州の観光復興のために日本政府が取りまとめた『九州の観光復興に向けての総合支援プログラム』による旅行需要創出の一環として、香港、台湾、韓国の3地域を対象に『ビジット九州スペシャルキャンペーン』を展開中だ。3地域のエクスぺディアとホテルズ・ドットコムでキャンペーン専用サイトを立ち上げ、九州への観光を宣伝、誘客している」

【マイケル・ダイクス(Michael Dykes)】
沖縄と米国で育ち、日本語と英語は母国語。ビジネスレベルのドイツ語も堪能。マサチューセッツ工科大学応用数学科卒。12年以上にわたり、日本マイクロソフトで業務執行役員コーポレート営業統括本部長など、大企業から中小企業までを担当する営業・マーケティング・技術職など幅広いポジションを歴任。15年10月、エクスペディアホールディングス入社。同年12月、同社代表取締役に就任。

エクスペディアホールディングス社長 マイケル・ダイクス氏

 
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