下期の国内旅行戦略
TDR商品の拡販に注力 潜在需要の顕在化が使命
──上期の状況はどうだったか。。
「今年は1月下旬に新商品発表を行い、4月商品からは国内商品もJALパックというブランドに変えた。年頭の立ち上がりは非常に良く期待していたが、震災により同業他社と同様に大きなダメージを受けた。方面別では、一番影響を受けたのはもちろん東北のツアー。次に関東を仕向け地とした商品、特に東京ディズニーリゾート(TDR)目的のお客さまが大幅に減少した」
「4月からは当初の計画を修正した上でスタートした。上期の取り扱いは修正計画を達成できる見通しで、対前年では約8割という状況だ。震災直後は非常に厳しかったが、6月ごろから前年並み程度まで需要が回復した方面が出てきた。需要の戻りが最も早かったのは沖縄だ。関東への出張パックなどのビジネス需要やダイナミックパッケージも戻りが早く、牽引力となった。方面別で堅調なのは沖縄、続いて北海道方面だ。沖縄については8、9月の予約が前年並みとなっており、完全に需要が回復したととらえている。夏休みの予約では、九州新幹線の全線開業効果もあり九州方面商品も伸びている」
──下期商品について伺いたい。
「予約の立ち上がりは良い。下期商品は上期の方針を継続して『記念日旅行』に焦点を当てる。また需要環境の厳しいTDR商品を何とかしたいとの思いが強い。上期同様に羽田空港とTDRを結ぶ専用バス『マジカルファンタジー号』での送迎などオフィシャルスポンサーならではの特典を付け、需要喚起を図る。九州商品も新幹線と絡めて売っていきたい」
「需要環境は厳しいが、北海道スキー商品も下期ならではの商品として販売を拡大したい。今年は国内でのJALパックブランドのデビューの年なので、従来とは異なる新しい商品ということでプレミアム感ある商品も投入した。北海道には非常に期待している。全体の需要が落ちつつあるが、もっと北海道の良さは認識されるべきだ。アピールできるものを掘り起こすなどして需要喚起に継続的に取り組みたい」
──下期の需要喚起のための方策は。
「一番の需要喚起策は、上期も実施した、販売店を対象にしたTDR研修旅行だ。やはり販売店の皆さまにお客さまを説得する力を持ってもらうことが需要回復につながる。下期も9月に100人規模で実施する予定だ」
──下期の国内旅行分野の需要動向をどう見ているか。
「業界として需要をどうやって伸ばしていくかを考えていきたい。震災をきっかけに、例えば東北旅行への潜在的な興味を持つ人が大幅に増えた。その思いを旅行需要としていかに顕在化するかがわれわれの仕事だ。家族の絆への関心が高まっているとされる家族旅行についても同じだ。需要を生み出すためにわれわれ旅行会社が取り組むべきことは、たくさんある」
──東北の観光復興への取り組みは。
「市場環境は厳しかったが、6月から東北方面へのツアーを従来通り販売し、できるだけ現地の受け入れ施設の応援となるようにした。震災により東北に注目が集まっている今は、東北の魅力を国民全体が再認識する絶好の機会だ。当社としても飛行機に2次交通を組み合わせたツアーなど、東北をじっくり味わえる商品に取り組みたいと考えている。その1つとして下期の『旬感旅行』では、飛行機とクルーズ船『飛鳥』を組み合わせた、岩手・大船渡に立ち寄るツアーを新たに発売した」
──旅館・ホテルとの連携をどのように考えているか。
「当社の契約宿泊施設、観光施設などで構成されている、各地域の『ジャルパック会』を中心とした話になるが、当社には送客をすることで協力機関の皆さんと一緒に繁栄していくという非常に大きな責任がある。施設の皆さんと共に、少しでもお客さまの支持を得られる商品づくりに一緒に取り組んでいきたい」
「国内旅行の活性化についても、地元の皆さんの情報発信と、当社のパンフレットやウェブサイトなどを使ったプロモーション、双方が一体となった取り組みが重要だ」
【おおにし・まこと】