日本温泉協会のかじ取り
PRにゆるキャラ利用も 地域相談役の積極活用も
――6月26日の会員総会で会長に選出されましたが、お話があったのはいつ頃ですか。
「5月の理事会で打診があった。正直、荷が重いなというのが本音だ。ただ、就任した以上は職責を全うし、協会発展のために尽くす」
――就任の抱負を。
「協会は温泉のことを第一に考え、資源の保護、適正利用を訴えていかなければならない。原点に立ち返り、温泉大好き人間を作っていきたい。総会後の情報交換会でも言ったが、協会は転換期を迎えており、大きく変わっていかなければならない。あまりかしこまらず気持ちに余裕を持ってあたりたい」
――温泉協会に限らず、業界団体は会員の減少に悩んでいます。
「当協会も減ってはいるが、危機的状況ではない。各地で総会をやることで、その地域から入会する人も増えている。よくメリットと言われるが、旅館協会や全旅連でもない(ダブる面もあるが)部分の、温泉旅館関連として生きていく人たちの集まりであることを理解していただきたい。温泉のことは温泉協会に任せておけばいい、と言われるよう協会のレベルアップを図っていく」
――協会ならではというと「旅と温泉展」がある。
「今年で59回目を迎え、例年同様、横浜で開催した。こうしたイベントは当協会の良さであろう。昔は東京駅や新宿駅で開催していたが、現在のように横浜ばかりではなく、大宮や千葉など他地方でも実施したい。また、できるかどうかは分からないが、一般消費者にアピールするため、イメージキャラクター(ゆるキャラ)を作り、情報発信していきたい」
――18年度は「会員メリットの創出による会員の増強」など四つを重点目標に掲げています。
「これまでやってきたことでも、踏襲すべきは踏襲し、無駄なものは切り捨てる。総花的でなく、選択と集中のスタンスで臨む。委員会活動も見直していく」
――総会では女性部委員会の休止について、時代と逆行する動きと厳しい意見もありました。
「決して女性軽視ではない。理事33人のうち女性は5人いる。他団体と比べれば多い方ではないか。少ないと言われればそれまでだが、行動力のある人が入っており、今後、理事会の中で活躍してくれると期待している」
――訪日外国人旅行者が急増しています。温泉は日本の貴重な観光資源であり、生かさない手はない。
「温泉は観光立国にとって大きなポイントになる。中国や韓国、台湾などアジアの諸国が、日本の温泉に注目している。SNSの活用や、ホームページの一部を英語化して、ONSENを世界に発信していく。17日には中国観光協会温泉部会のメンバーが協会を表敬訪問してくれた。機会があれば交流を図っていく方針だ」
――環境省や経済産業省・資源エネルギー庁など行政府との関係は。
「今後はさらに関係を強化する。定期的に話し合いの場を設け、意見交換する。環境省が進めている『新・湯治』についても全面的に協力していく」
――温泉協会が設置されている県は限られており、日本温泉協会も全国組織ではない。どう組織化するか、課題の一つですね。
「47都道府県に温泉協会ができればいいが、なかなか難しい。そのため、『地域相談役』を活用し、地域とのつながりを深めたい。現在、33人いるが、連絡を密にしてもっと働いてもらう(笑い)」
――会員にメッセージをお願いしたい。
「総会に出てきていただきたい。楽しい時間を過ごしましょう。その場合、地元のパンフレットを持参し、PRしてほしい。地方での開催に難色を示す向きもあるが、地域の温泉の実情を知り、地域の方々と親睦を図ることは決して無意味ではない。総会も持ち回り開催は温泉協会ならではのもの。ぜひ理解を得たい」
――印象に残っているところはありますか。
「昨年の酸ヶ湯(青森)総会だ。120人も来てくれ、大いに盛り上がった。未開催県はまだまだあるが、個人的には奈良県で開いてみたいね」
※ささもと・もりお=青山学院大卒。ハンターキャピタル執行役員。前常磐ホテル会長。日本温泉協会では理事、副会長など歴任。現在は個人会員。2014年11月藍綬褒章受章。山梨県出身、70歳。趣味はゴルフ、ハンティング。
【内井高弘】