日本自動車連盟(JAF)の観光事業
会員向けサービス重視 「第二の柱」として成長
──近年、観光分野に力を入れているがなぜか。
「ロードサービス以外の会員サービスの拡大だ。JAF=ロードサービスというイメージが強い。昔から(観光関連などの)サービスはしていたが、ロードサービスを利用しない時も会員のメリットを感じていただけるよう、ここ4、5年会員向けのサービスを重視してきた。観光は『第二の柱』だ。その結果、5年前1700万人を割っていた会員数が、今は過去最高1815万人になった」
──観光事業は優先順位が高いのか。
「(ロードサービスに次いで)2番目だ。各支部とも(観光事業に携わる)人材を投入している」
──観光事業を推進する体制は。
「本部では事業推進本部になる。メンバーは11人。支部は会員事業課、あるいは会員事業係が担当している。本部が施策を企画し、その施策を基に各地で支部が動いている。旅行業登録は本部のみ。旅行事業での収入は、アフィリエイトの収入とJAF発行媒体の掲載料になる」
──各地の自治体と観光協定を結んでいるが、現状はどうなっているか。
「最新の数字は280団体(と締結)。全自治体の2割弱に上る。観光地になりうるところはたくさんある。既存の観光地は当然であるが、車でしか行けないところへも送客していきたい。ドライブにより新しい地域の魅力が発掘できると考えている。約1200万部発行している会員機関誌『JAFメイト』では特集を組み、今まで各媒体に取り上げられていない地域の観光やグルメを紹介している」
──協定のきっかけは。
「2010年、大阪支部と堺市との協議の中で話が出てきた。第1号は2010年8月になる。(同年にJAFホームページから観光情報を分離した)JAFナビに自治体が作ったモデルコースプランを紹介することにした。そこから、観光協定が全国に拡大し、今では自治体との協定は重要項目だ」
──数値目標はあるか。
「昨年、地方創生の機運が盛り上がったため、JAFも地域振興に寄与していかなければならないと考え、300(自治体との締結)という目標を置いた。残念ながら280にとどまったが、昨年だけで100以上は増えた。現在は新たな目標として、600を掲げている」
「昨年10月『ドライブ・ツーリズム ドライブが日本を元気にする』という冊子を作った。地方へ送客するのは飛行機や鉄道ではなくドライブであり、ドライブ振興が地域の活性化に大きく役立つものであることを示し、全国の全ての自治体に無償配布した」
──自治体ごとに協定の違いはあるか。
「協定の内容は同じ。メーンは地域・観光振興とドライブプランの紹介だ。しかし、実行する内容は各自治体にあわせて企画することとし、各支部に任せている」
──自動車の団体なのに(自動車とは関連性がないように見える)さまざまな取り組みをしている。
「ロードサービスを盤石に保ちながら、会員満足度を上げていく必要があるためだ」
──(観光関連施設が会員を優遇する)優待施設制度について。
「3月末現在、契約施設は3万4268に達し、その利用者数は約3千万人に上っている。会員拡大と会員数維持のために行っている。会員のさまざまなニーズに応えていくため、ジャンルを問わず、暮らしの中で利用できるサービスを拡大している」
──今後の観光事業の方針は。
「自治体との観光連携をさらに深めていく。それがドライブ客の拡大につながる。さらに、NEXCO(高速道路会社)との共同企画も検討している。自動車ユーザーの最も多い要望は、高速道路料金の引き下げだ。NEXCOと(JAFと)観光協定を結んでいる自治体が共同し、地域に送客したいと考えている。高速道路料金の負担軽減はドライブ旅行への大きな誘引となる」
──インバウンドについての取り組みは。
「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、海外の自動車クラブに日本の観光地を紹介したり、レンタカーを利用する外国人の問い合わせに対応できるスタッフを置いたりすることを検討していく」
──最後に一言。
「着地型旅行になって地域が情報発信できるようになった。しかし、積極的なところとそうではないところと、地域によって温度差がある。JAFはユーザー団体として、ドライブの楽しみを広く伝えたいと考えている。地域と連携し相互の媒体をうまく使って積極的なPRをしていきたい」
【だいどう・こうすけ】
大阪市大商卒。1978年日本自動車連盟に入り、関西本部企画室長、和歌山支部所長、本部事業推進本部長などを歴任。昨年6月、理事(事業推進本部長兼務)に就任。60歳。