ウェブ販売、てこ入れ
楽天、じゃらんを追撃へ
──10月1日に新設された部署だが、その設立意図は。
「ツーリズマーケティング研究所の推定では、eコマース市場のなかで旅行は昨年が11.4%あり、これが2011年までに倍ぐらいになる。旅行全体の市場はほぼ横ばいか縮小ぎみで、お客さまがリアルの店舗からオンラインの店舗にシフトしている環境もはっきりしている。JTBとしても拡大する市場できちっとビジネスを組み立てなくてはいけない」
「インターネットでの宿泊販売額が、専業としている『楽天トラベル』や『じゃらんnet』と比べて少ないという問題意識もある。推計では『一休ドットコム』を含めた3サイトの取扱額を合わせると約3600億円で、JTBの07年度の宿泊総販3630億円と同じぐらいだ」
「今までJTBの組織は、国内、海外、国際の3つを軸に、また店頭販売と団体販売という切り口で編成していた。ウェブを使った戦略はこれまで各部門でばらばらに作っていたのだが、すべての部門にまたがるものだから一元化をし、組織の集中力を高める必要があると考えた」
──ウェブ戦略の方針は。
「大きな軸は2つ。JTBの強みは、店舗やコールセンターを全国ネットワークとして持っていること。ウェブとコールセンター、リアル店舗の各チャネルを有機的に結び付け、他の旅行会社、特にネット専業エージェントが真似のできない価値をマーケットに提供するというのが1つの軸だ。社内的には『クロスチャネル戦略』という言い方をしている。実際、昨年あたりから海外旅行企画商品『ルック』などでは、インターネットを見て店に行って申し込むといったケースが増えているので、お客さまからも支持されていると理解している」
「国内旅行企画商品『エース』の方は、まだ思うようにやりきれていない。商品自体はマーケットの競争力が十分にあるので、今後、インターネット上での商品数を充実させることによって、ビジネスに結び付けていく」
──もう1つの軸とは。
「リードされているオンラインでの販売で、楽天やじゃらんに追いつくことだ。今までのリアルの販売で培ってきた各契約施設との信頼関係や、その信頼関係を基にして作ってきたエースという国内旅行の商品群がある。このJTBが持っている商品力をもっとアピールすることで、なんとしても追いつきたい」
──となると旅館・ホテルとの連携がカギになる。
「オンライン販売でのメーンは国内の宿泊販売だ。JTBは多くの宿泊施設と契約していて、昨年度も宿泊販売の目標を達成し、宿泊施設の期待にこたえているとは言えるのだが、オンラインでの販売の視点から見ると、楽天、じゃらんと差を付けられているということは十分に期待にこたえているとは言えない」
「楽天とかじゃらんとかが既存の旅行会社とは別の切り口の提案を宿泊施設にしていて、それで売れている、マーケットに支持されているという事実がある。我々も宿泊機関との新しい関係を築かなければ、マーケットに置いて行かれる危険性がある。今のお客さまはこうですとか、こういう商品を出せばこのチャネルでは売れますよとか、情報提供や提案をし、今まで以上にきちっとコミュニケーションをとってオンライン販売を拡大していきたい」
【たかぎ・ひろひこ】
53歳。1978年一橋大学を卒業し、日本交通公社(現・JTB)に入社。品川支店長、PTS常務などを経て、08年10月から現職。