【観光立国・その夢と現実 12】特別地方消費税撤廃運動5 小原健史


 旅館業界の永年の悲願であった特別地方消費税撤廃の運動と国会議員を語る中で、今をときめく自民党の二階俊博幹事長を語らずにはいられない。

 昭和の高度経済成長の時代は重厚長大型の産業が重視され、われわれの宿泊業界や観光産業は”遊びごと”との軽い扱いを受けていたのであるが、その頃から二階先生は観光産業の将来に着目しておられた。それは運輸政務次官を2回も経験されたことにも由来する。

 われわれ対策本部では、さまざまな対策を考える中で、特消税の撤廃には当時の運輸省の理解を得ることも必要で、それには二階俊博代議士に会う必要があるということになった。しかし、当時の二階代議士には誰もパイプを持たない。その際に福島県の鈴木喬氏が「うちの地元の渡部恒三先生の派閥の後輩だ!」と言うので、鈴木氏と私が渡部先生の事務所にお邪魔することになった。

 面談していきなり「二階代議士を紹介してほしい」と言うものだから、渡部先生は「旅館業界から陳情というから時間をとったが、オレでねえのか?」と笑いながら、二階代議士に電話をされ「二階君、旅館業の若手が君に会いたいとオレに陳情に来たぞ!」と直截(ちょくせつ)的に言われると、当時同じ派閥の若手議員だった二階代議士はまさに飛んで来られ、渡部恒三先生の立ち合いの中、特消税の撤廃運動について説明をした。

 二階先生は、はじめは「都道府県税の特消税を恒久化するために市町村に配分し観光振興を主とした財源に使うようにしたのは私だ!」と言われていたが、われわれの〔消費税と特消税は旅館飲食業界を差別する二重課税です!〕という訴えに耳を傾けていただき、最終的には「分かった、協力するようにしてみよう」と言っていただいた。

 また、「小原君は佐賀県議会の小原議長の息子さんだろ!」と言われ、驚く私に「私が昔仕えた遠藤建設大臣の親戚に佐賀県の杉原荒太先生がおられ、その選挙応援に佐賀県にはよく行ったもんだよ。またお父さんの議長車にも乗せてもらったこともある」と言われた。

 まさか親父の話が出るとは思ってもいなかったが、その後、何かにつけて二階先生には全旅連の幹部として、いろいろとお世話になったことを考えると〔人間の縁とは不思議なもの〕であると思う次第だ。

 特消税撤廃の最終段階では伊吹文明先生のお力に頼るところ大であった。旅館業の所管官庁は、当時の厚生省であり、その関連の厚生族の議員を代表する立場に伊吹文明先生がおられ、しかも旧大蔵省出身で税調の幹部でもあられたことから、われわれ対策本部にとっては重要なキーマンの1人であった。

 伊吹先生は、われわれが陳情に行くと対策本部のがむしゃらな陳情の方法や政治の筋道を違える部分には「何をやっているんだ!君たちは!」と極めて手厳しかったが、最終的には自治省や知事会を主とする特消税存続派と徹底的に闘っていただいた。

 最終段階で、母が風邪をこじらせ重篤な状態で地元に帰っていた私に代わり政治面の指揮をとっていた針谷了氏に「いよいよ、特消税撤廃はOKだ、祝杯を挙げて良い!」とのサインが出たのも伊吹先生からであった。

 このコラムは、まだまだ特消税撤廃の話が続くが、撤廃を貫徹した後の旅館業界の政界での知名度は格段に上がって、他の件で国会議員会館の各先生に陳情に行き「旅館業です!」と言うと、秘書の方々が椅子の音を立てて起立していただくほどの効果があった。

 (佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)

 
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