佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター(=BFTC)に思い切った財政的支援をした当時の古川康佐賀県知事は自治省官僚出身で、元々BFやユニバーサルデザイン(UD)に造詣が深く、社会的な弱者やハンデを負う人々に寄り添う考えの人物である。例えば、旅館ホテルやショッピングセンター、病院などの施設の玄関に近いところに、“車イス利用者や障がい者、妊婦さんたち”のための駐車スペース=「パーキング・パーミット」を佐賀県から全国に広めたのもこの古川知事の功績である。
その古川氏が佐賀県知事選挙に初出馬された時に、初めて私とあいさつを交わした際、極めて印象的なやりとりがあった。私が「はじめまして小原と申します」と言うと、古川氏は「私は小原さんのことはよーく知っています!」とのこと。私が不思議そうな顔をしていると強烈な言葉のアッパーカットが飛んできた。いわく「私は、以前、自治省で、小原さんたちが撤廃された特別地方消費税の担当係長でした」、私は「エッ!…アチャー!」である。「特別地方消費税撤廃運動」については、このコラムの中核の話題の一つとして後日詳細に述べるが…その特消税の撤廃の戦いの相手方の自治省の中心人物の1人が目の前にいる。まさに「昨日の敵は、今日の友」である。知事選では、当然、一生懸命応援し、古川氏は立派な成績で佐賀県知事に就任された。
さて、本コラムを読まれている旅館ホテルの経営者や幹部の方は、BFやUDと言うと「…よくわからん!」とか失礼ながら「車いすや障がいのあるお客さまがたくさん来られてもなあ?」と感じておられると思うが、私が嬉野温泉で熱心にBFやUDの観光振興に取り組んでいるのには明確な理由がある。
日本の人口は百年後には半分になると言われており旅館ホテル業は、その減少分を埋めるがごとく、国の「観光立国」の方針もあり訪日外国人=インバウンド観光客の誘致に注力をしている。しかし、減少し始めたとはいえ日本には1億2千万人以上の人口がおり、これは世界でも上位に位置する人数で「従来は、観光や温泉旅行ができなかった国内の客層に来ていただく態勢づくり」を行うことも重要な視点である。
現在、わが国には、高齢者と呼ばれる65歳以上の人口は約3600万人、障がい者手帳を持つ人が約800万人、ベビーカーユーザーが約300万人おられて合計で4700万人。何と全人口の3分の1が、われわれバリアフリーツアーセンターが商圏として捉えているのである、これはデカい!。また、当面は高齢者は年々増加していくのである。さらに、近年「障がい者差別解消法」が施行されて、憲法で保障された「人権」が障がい者の方々のために格段に整備されている。
最後に一言、「人は誰でも(多分)人生の最後には車イスのお世話になる」のである!。(佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)