「観光立国」の課題を掲げて、このコラムを始めたが、最近、宿泊業界において気になることがある。それは、全国的に「はやり病?」のように波及している「ホテル税・宿泊税」のことである。
私は「宿泊税」に反対である! それは、どこからどう見てもこの税金の課税根拠が曖昧で明確ではないからである。ただ「取りやすいところから徴税する」だけではないのか? その行政のスポークスマンは「観光振興のための施策の財源として、徴収するしかない」というが、これは詭弁(きべん)だ!
観光振興の施策の財源はその行政の一般財源に求めるべきで「地域外から来ていただけるお客さまに課するべきものではない」。言い換えれば、この税金を徴収するであろう地方の都道府県や市町村の多くは定住人口が加速度的に減少していて、必然的に税収も減る。その財源不足を理由に交流人口である宿泊客に「ごみ処理やし尿処理の費用」として課税するという費用負担的な課税根拠を主張するのだろうが、定住人口が減少しているからこそ、その行政体の域外から「宿泊客や観光客という交流人口」を呼び込み「宿泊や飲食、買い物」などの消費行為を誘発して地域経済を潤すという論理が優先されるべきである。
地方の行政が課税する「宿泊税」というわずか数百円の金額のために、もっと莫大な経済効果を発揮して地域を潤してくれる宿泊客や観光客の心証をむしばんではならない。
地方の行政体は、消費税の導入当初に、われわれ旅館・ホテル業界が主張した「特別地方消費税」と「消費税」の二重課税の訴えを忘れないでほしい。
このコラムを読まれる若い世代の方々は「特別地方消費税の撤廃運動」をご存じないかもしれないので、あえて簡単に触れるが、昭和14年ごろ、当時のソ連と満州国境でソ連軍と日本軍が戦闘を始めたが、その際に「兵隊さんが大陸で命がけで戦っている時に国内の旅館や料理屋や遊郭で飲んで食らって遊んでいる奴は悪い奴だ! 税金を取れ!」として始まったのが「遊興飲食税」であり、その後「料理飲食等消費税」となり、平成元年の消費税導入時に「特別地方消費税」となったのである。この税の根源は「悪い奴から税を取る!」という懲罰的なとんでもない税金なのである。
話を戻すが、最近の「ホテル税・宿泊税」を課税しようとする行政体が、観光振興のための課税というならば、なぜ、観光産業全体に課税しないのか? 同じお客さまが利用される鉄道、バス、航空機、そして旅行会社、地元のレストランや観光施設、お土産品屋にも、なぜ、等しく課税しないのか? なぜ、旅館ホテルにのみ課税するのか? なぜ、手っ取り早く税金を取りやすいところから徴収するのか? これは法の下の平等をうたう憲法についての違反でもあると、私は主張したい。
(佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)