今さら触れたくもないが新型コロナ感染症が発生した2019年秋から既に3年が経過する。
この間、わが旅館ホテル業界はかつて経験したことのない〔ウイルスによる営業的な大打撃〕を受けた。それは政府の号令一下、感染防止のためとはいえ「外出自粛」が繰り返し繰り返し叫ばれたことで、国民のほとんどは自宅にこもり、旅館ホテルや飲食業は需要が激減し、営業休止が数カ月にもわたる施設が相次いだ。
コロナの感染が始まった頃は、対症治療法の知見がなく、人が感染すると隔離され、家族が看病することも、友人知人が見舞うことも禁止され、誰との接触もなく死亡するという悲惨なことが起きた。また、有名なタレントが急逝したこと等により、感染に対する恐怖と情報の錯綜でパニックが起こった。
一方で、国民の生活を守る意味で雇用の継続や経営支援のための政府や地方自治体のさまざまな補助制度等が実施されたことは有難いことであったが、第1期目の〔Go Toトラベル〕のキャンペーンは、急激な宿泊利用の増加があり、それまでに失った売り上げを一気に取り戻すほどの勢いもあったものの、再びコロナ感染症がまん延し、Go Toトラベル自体が、あたかも感染・まん延を促進しているかのような間違った受け取られ方をして、再び宿泊・飲食の利用が急速に減少し、深い闇に舞い戻ってしまう、そんなことが続いた。
そのような疲弊する旅館ホテル業界に対し、コロナ期間中に発生した〔運転資金の借入金〕は令和の徳政令をもって返済不要にすべし!と私は考える。
その論拠は、国が感染のまん延を防止するためとはいえ国民に〔外出自粛〕を強烈に訴えたから、旅館ホテルや飲食店から利用客が消えてなくなったこと。また、〔3密回避〕の訴えで、会食やグループの飲食や宴会・パーティーがこの世から消えたかのような状態が生まれたこと等による。
政府は経営を支援する意味で”ゼロゼロ融資”で無利子・無担保の融資制度をつくり、それを利用して一時的に助かったような気がするものの、あくまでも〔借入金〕が発生したことに変わりはなく、いずれ、いや、もう既に返済が始まっている旅館ホテルもある。
この際〔令和の徳政令〕で返済を不要にすれば、ポストコロナの旅館の運営現場では〔全国旅行支援〕等の旅行促進キャンペーンで急増したお客さまの対応に専念できる。
第2に、コロナ感染症により3年にわたり悪影響を受けた旅館ホテルは働き手の〔スタッフが離散〕し、従前と同じ運営が困難になった所も多い。また、旅館の規模に限らず、団体のお客さまへの対応が全くできないので客室数を減らして〔個人客対応〕に切り替えた!とか、調理師がいなくなったので〔素泊まり中心の営業〕に切り替えたりとか、その運営の形態も大きく変貌するところもあり、コロナが残した爪痕は深い。これら状況に対応すべく旅館ホテル業界団体は、現在の状態を座視することなく、前述の〔コロナの期間中の運転資金の借入金は返済不要=令和の徳政令〕の制定を実現すべく政治的に運動を展開する必要がある。
また、従来にないポストコロナの新しい旅館ホテルの運営のあり方、つまり〔泊〕=客室のGXやDX、バリアフリー化、〔食〕=館外飲食店の利用や専門店からの宅配も導入、〔浴〕=個室露天風呂に付加するサウナやエステ、そして、全館的には、高齢者や障がい者への対応、3歳未満の赤ちゃんと若いご夫婦のニーズへの対応、外国人の求める日本の魅力の再発見など新しい基軸を模索すべきである。コロナで委縮した自らの心を開き新しいチャレンジをしよう!
(元全旅連会長)