【観光立国・その夢と現実 40】全旅連井上会長の改革に期待する 小原健史


 6月13日~14日、愛媛県で開催された全旅連の理事会・総会・全国大会で待望の全旅連井上善博会長の体制が船出をした。地域的なえこひいきをするのではないが、また、せんえつながら平成15年(2003年)に不肖私が会長に就任して以来、ちょうど20年ぶりに九州出身の会長の出現である。

 井上会長が実現したのは全旅連青年部の鈴木元部長、星前部長、塚島現部長と今回専務に就任した亀岡氏の尽力が奏功した。当初井上氏本人は「他の有為な先輩が多くおられる!」と会長選挙への出馬には否定的であった。しかし、この3年間にわたり新型コロナ感染症で疲弊した旅館業界を活性化するには、新しく若いエネルギッシュなTOPが必要だ!と全旅連青年部の幹部たちが立ち上がり、青年部員に人気が高いOBの井上善博氏に白羽の矢を立てて、その実現にまい進した。

 全旅連青年部がそこまで思い詰めるには理由があったようだ。それは、旅館業界と関係のある中央官庁、とりわけ観光庁の若手官僚と交流を深め、コロナ災禍の後はどのようにして日本の観光を、旅館ホテル業界の事業の再生をするか真剣な話し合いを続けた。

 その成果をもって全旅連青年部と親交のある国会議員団とも意見交換をし、国会議員幹部にも陳情してコロナ災禍からの旅館ホテル業界の復興策を観光庁の〔再生・高付加価値化事業〕として結実させた。

 この補助金は、コロナでお客さまが何カ月にもわたり蒸発し開店休状態を初めて体験した“ドン底状態”の旅館ホテル業界に夢と希望を与え、設備更新や営業戦略の見直しを可能にさせた。

 その内容は、年間1千億円を超える予算が数年にわたり補助されるという過去に経験のない制度でもある。私の住まいする嬉野温泉でも多くの旅館がこの“高付加価値化事業”の恩恵を受け、次々と改修工事が始まっていった。

 このような政治活動の成功事例を、全旅連青年部だけでなく全旅連全体、また観光産業のパワーとして継続していくには、一緒になって闘うTOPが欲しかったのであろうし、その具体化が井上会長の実現という形となったといえるのかもしれない。

 私は、6月13日の全旅連の席上で次の発言をした。〔全旅連会長は、最初の会長選考規定に戻り、その任期は1期2年で2期4年まで〕〔会長の就任期間は予算・決算の期間と同じ4月1日から翌々年の3月31日までとする〕〔また全旅連会長は、旅館政治連盟の理事長も兼務し、これも前述と同じ4月1日から翌々年の3月31日までとするべし!〕〔最後に全旅連から国会議員を輩出すべし。国会の中にわれわれの仲間がいるかいないかでは政治活動の結果の良し悪しはまるで違ってくる!〕と。

 井上新会長は、各委員会の幹部に全旅連青年部OBを多数招聘(しょうへい)し、事業の活性化を図り、事務局には亀岡専務、竹村事務局長を配して会長選挙で訴えた全旅連の新たな態勢づくりを始動したようだ。

 現下の旅館ホテル業界は、新型コロナ感染症の悪影響も一段落した中で〔コロナ期間中の借入金への対応〕〔深刻な人手不足への対策〕〔一気に戻りつつあるインバウンドのオーバーツーリズムの解消〕など問題は山積する。

 そのような中、全旅連井上丸が「天気晴朗なれど波高し」の中で奮闘努力を重ね無事に目的地に着くことを祈るばかりである!

(元全旅連会長)

 
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